日本産食材ピックアップみそ/しょうゆ

日本を代表する発酵食品

一般的には、みそもしょうゆも、その起源は古代中国の「醤(ジャン)」であるとされています。どちらも日本で独自に発展させた我が国が誇る調味料であり、長きに渡り日本の食卓に欠かせない調味料として活躍している大豆を用いた発酵食品です。

アジアには発酵食品を調味料として用いる国がいろいろあります。たとえば、韓国にはテンジャンというみそに似た調味料がありますが、柔らかく繊細な風味の日本のみそに比べ、韓国のテンジャンは力強い風味があります。中国料理などに使われる豆板醤や甜麺醤もみそに似た発酵食品です。

また、タイにはナンプラー、ベトナムにはニョクマムという、カタクチイワシなどの小魚を大量の塩で漬け込んで熟成する魚醤がありますが、これらに比べ、大豆を原材料とした日本のしょうゆはまろやかな風味が特徴です。

みそは地域色が豊か

みそは大豆を蒸し煮にして、日本で発展させた「国菌」ともいえる麹菌で作る麹、塩、水を加えて仕込み、発酵、熟成させます。米麹を使えば米みそ、麦麹を使えば麦みそ、大豆麹を使うと豆みそとなります。

現在日本で作られているみその約8割が米みそで、仙台みそ、江戸甘みそ、越後みそ、信州みそなど、仕上がりの色や味わいの異なる地域ごとのみそがあります。麦みそは九州や、中国・四国地方の一部で、豆みそは愛知県、三重県、岐阜県を中心に生産されています。多くの人にとってみそ汁は“おふくろの味”でもあります。また最近は、素材や調理法によっていろいろなみそを使い分けて楽しむ人も増えています。

しょうゆも個性いろいろ

しょうゆの原材料は大豆と小麦で造ったしょうゆ麹と塩水です。大豆はうまみのもとになり、小麦は香りや甘みのもとになります。さまざまな微生物の活発な活動によってしょうゆ独特の色や香り、味わいが生まれ、次第に熟成していきます。この熟成した状態をしょうゆもろみといい、これを絞ればしょうゆの完成です。

しょうゆには大きく分けて5種類があります。日本でもっとも多く使用されているのは「こいくちしょうゆ」。まろやかで深い旨みがあり、料理用にも、刺身につけるときなどにも使える万能タイプです。こいくちしょうゆよりも色が淡く、素材の色を活かしやすい「うすくちしょうゆ」は、関西地域で好んで用いられています。また、とろりとした粘度がありコクもあるのが「たまりしょうゆ」です。一度絞ったしょうゆで仕込む「さいしこみしょうゆ」は、色、味、香りともに濃厚で、刺身や寿司などに用いられます。うすくちしょうゆよりもさらに淡い「しろしょうゆ」は、淡白な味わいに加え甘みの強さと独特の香りが特徴で、茶碗蒸しなどの料理に使用されます。

健康にプラスになるみそやしょうゆの成分

大豆には旨み成分であるグルタミン酸が豊富に含まれていますが、みそやしょうゆには、原材料の大豆を上回るグルタミン酸が含まれています。

実はこのグルタミン酸に、肥満予防の効果があるという研究が進んでいます。また、グルタミン酸は脳の中で摂食や自律神経をつかさどる部分に作用し、消化液の分泌や消化管運動に影響を及ぼしていることがわかってきました。

このほかにもみそやしょうゆには、いくつもの健康成分が含まれています。どちらにも原材料の大豆に由来する大豆イソフラボンが含まれていますが、この大豆イソフラボンは、体内で女性ホルモンのエストロゲンと似た働きし、美肌に効果があるとされています。

また、両方の製造工程で産まれる褐色色素の成分であるメラノイジンは、抗酸化作用、発がん物質抑制作用、乳酸菌の増殖作用や血圧上昇を抑制する作用などが知られています。

有機みそ、有機しょうゆは厳しい基準のもとで製造

農林水産省が認定する有機JASマークをつけるには、塩および水の重量を除いた原材料のうち、有機農産物および有機農産物加工食品の原材料に占める割合が95%以上でなくてはなりません。有機農産物とは、種まきや植え付け前2年以上、農薬や化学肥料を使わないほ場で栽培されたものに限られ、遺伝子組み換えをしていないものを使用しなければならないということが位置づけられています。また製造工程でほかの製品と混合することのないよう、厳しく管理されています。

これらの条件を達成してはじめて有機みそ、有機しょうゆと名乗ることができるのです。

拡大する輸出量

近年、和食の価値が世界で認められ、みそやしょうゆの調味料としてのポテンシャルの高さも評価されてきています。それを物語っているのが、輸出量と金額の増加です。

みその輸出は、1990年に約2800トン/約6億7000万円でしたが、2000年には約5800トン/約11億6000万円となり、2010年には約1万トン/約20億円に、そして2017年には約1万6000トン/約33億3000万円となりました。

しょうゆは、1990年に約1000万リットル/約19億5000万円、2000年には約1050万リットル/約23億2000万円、2010年には約1770万リットル/約40億円、そして2017年には約3360万リットル/約71億5000万円となりました。どちらも徐々に輸出量が増えていますが、とくに2010年から2017年の伸びには目をみはるものがあります。

イスラム圏向けにハラール認証を取得した製品や、小麦を使わないグルテンフリーの製品も登場しており、世界のさまざまな国や地域のレストランで、あるいは家庭で、日本の味を支えてきたみそやしょうゆが生かされる機会はますます増えることが期待されています。