【中国・潮流】明暗分かれる地域経済

2017年8月25日

「まだら模様」と表現されることの多い中国経済。周りを見回しても、確かに明暗が分かれているのを肌で感じることが多い。

山東省青島市は2016年に域内総生産(GRP)が初めて1兆元を超えた。中国の都市でいわゆる「1兆元クラブ」のメンバーは現在、四つの直轄市を含む12都市(上海市、北京市、広東省広州市、深圳市、天津市、重慶市、江蘇省蘇州市、湖北省武漢市、四川省成都市、浙江省杭州市、江蘇省南京市、青島市)となっている。上海市は市別で2006年に初めてGRPが1兆元を超え、2016年には2兆7,466億元となっている(表)。

表:各都市のGRP
都市名 2016年のGRP GRP1兆元を超えた年 都市等級
上海 27,466 2006年 直轄市
北京 24,899 2008年 直轄市
広州 19,611 2010年 広東省省都
深圳 19,493 2011年 経済特区
天津 17,855 2011年 直轄市
重慶 17,559 2011年 直轄市
蘇州 15,400 2011年 江蘇省地方都市
武漢 11,913 2014年 湖北省省都
成都 12,170 2014年 四川省省都
杭州 11,050 2015年 浙江省省都
南京 10,503 2016年 江蘇省省都
青島 10,011 2016年 山東省副省級都市

出所:各都市統計データを基に作成

青島市では地下鉄が2015年末に開通、2016年末には市街地へと延伸し、現在16路線が計画され、今後次々と開通が予定されていることもあり、それに合わせ青島市内の商業エリアも変化している。また、青島市郊外の膠州市(青島市の県級市)に建設中の新空港は、北京首都国際空港、上海浦東国際空港と肩を並べる規模となり、現在の青島流亭国際空港に代わり2019年から利用開始となる計画であるなど、勢いを感じる。

一方、青島市と比べられることの多いのが大連市である。2000年時点でのGRPは、青島市の1,191億元に対し、大連市は1,062億元と近い位置にあった。大連市は青島市と同様に省都ではないものの、いち早く外資誘致に取り組み、また日本との距離が近いこともあり、輸出加工型の日系企業が多く進出しているなど、青島市との共通点も多い。外資企業の誘致数では青島市の6,575社(2017年7月)に対し、大連市は1万8,574社(2016年末時点)である。しかし、近年は中国東北部の経済低迷を受け、特に2013年以降は徐々に差が開いている。大連市の2015年のGRPは7,732億元と、1兆元到達はいまだ視野に入っていない。両市の税収(公共財政収入)を比較すると、この差が顕著に現れている(図)。

図:青島市と大連市の公共財政収入の比較
青島市。2010年 453億元、2011年 566億元、2012年 670億元、2013年 789億元、2014年 895億元、2015年 1,006億元。大連市。2010年 501億元、2011年 651億元、2012年 750億元、2013年 850億元、2014年 781億元、2015年 580億元。

出所:「青島統計年鑑2016」「大連統計年鑑2016」を基に作成

青島市は1兆元クラブ入りを果たし、次の目標は国家中心都市の指定である。国家中心都市は4直轄市に加え広州市と成都市の6都市のみが指定されている。国家中心都市に選定されれば、より多くの財政が投入されることになり、さらなる発展へとつながるだろう。

執筆者紹介
ジェトロ 青島事務所長
佐藤 秀二(さとう しゅうじ)
1995年に日本貿易振興会入会。鹿児島貿易情報センター、財団法人交流協会台北事務所出向、海外調査部中国北アジア課、秋田貿易情報センター(所長)などを経て、2013年より現職。