【中国・潮流】改革開放40周年を迎える中国

2018年1月12日

「2018年に私たちは改革開放40周年を迎えます。改革開放は現代中国の命運を決めた鍵となる施策であり、40年間にわたる改革開放によって中国人民の生活は小康(ややゆとりのある生活)を実現し、徐々に豊かになってきました。」これは、中国共産党第19回全国代表大会(第19回共産党大会:2017年10月18日~24日)閉幕の翌日(10月25日)に行われた記者会見での習近平総書記による談話の一節である。改革開放を決定づけた中国共産党第11期中央委員会第3回全体会議は1978年12月18日~22日に開催されており、2018年には40年目を迎える。

第19回共産党大会では、「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」が新たに党規約に盛り込まれたことが注目を集めた。「中国の特色ある社会主義」は、改革開放の総設計師と呼ばれる鄧小平が提唱したもので、経済面では「社会主義市場経済」がその特徴とされる。1992年1~2月にかけて行われた鄧小平による南巡講話において、改革開放の加速が呼びかけられ、これを踏まえて同年10月12日~19日に開催された第14回中国共産党大会で「社会主義市場経済」が正式に提起された。これ以降、中国は紆余(うよ)曲折を経ながらも、現在に連なる経済発展の道を歩んできた。そして、昨年2017年には「社会主義市場経済」の導入からも既に25周年を迎えた。

中国では、第19回共産党大会の前後から「毛沢東が国を立ち上がらせ、鄧小平が国を豊かにし、習近平は国を強くする(中国語で「站起来、富起来、強起来」)」という言い回しがよく聞かれるようになった。「習近平による新時代の中国」は、国が強くなる時代とされる。日本のメディアではあまり注目されなかったが、今回の党大会で新たに党規約に書き込まれた「習近平」を含む表現として「習近平の強軍思想の貫徹」というものもあり、「強い中国」は確かにこれからの中国が目指している方向性のようにも感じる。

改革開放40周年を迎える中国で、統計によれば2016年の40歳未満の人口は全体の52.5%と、既に人口の半数以上が改革開放後に生まれていることになる。また、「社会主義市場経済」導入後に生まれた25歳未満の人口は、全体の28.8%に上る。さらに、最近の中国では若い世代が最もよく働き、最もよく消費すると言われるが、10~40代(10~49歳)の人口は58.3%に上る。いまや改革開放後の世代が中国の中心となっている。

私たち日本人は政治体制の違いもあり、中国という国を見る時にどうしても色眼鏡で見てしまう傾向があるように思う。しかし、現地で生活していると、そこに生きる多くの庶民は、日本人と同様、いかに幸福で豊かな生活を送れるかということに最も大きな関心を抱き、日々生活していると感じる。改革開放から40年、市場経済化から25年が経過し、豊かな社会しか知らない世代が多数を占めるような状況では、日本人と中国人の価値観の差はさらに縮小していくように思う。

「強い中国」が目指されている中ではあるが、改革開放40年目の節目を迎える中で、中国の庶民のためにも、やはり「強さ」よりは「豊かさ」を追求してほしいと思うところである。

執筆者紹介
ジェトロ・上海事務所長
小栗 道明(おぐり みちあき)
1994年、ジェトロ入構。ジェトロ・北京事務所(1999~2004年)、ジェトロ・広州事務所(2004~2006年)、本部企画部海外地域戦略主幹(北東アジア)などを経て、2015年より現職。