シドニーで日本酒商談会・セミナーを初開催(オーストラリア)
日本の酒蔵17社が各自の魅力を発信

2018年7月12日

ジェトロ・シドニー事務所と日本酒造組合中央会は2018年6月21日、シドニー市内で「日本酒商談会 in シドニー」を開催した。ジェトロがオーストラリアで日本酒に特化した商談会を開催するのは初めて。日本酒造組合中央会メンバーの酒蔵17社が参加し、日本酒を売り込んだ。併催イベントとして、日本酒の普及セミナーも開かれた。オーストラリアでは日本酒への関心が高く、オーストラリアのレストラン関係者、バイヤー、ソムリエ、現地メディア関係者ら77社109人が来場した。


セミナーの様子(ジェトロ撮影)

日本酒の対豪輸出は過去6年間で2倍に

日本政府は、2019年に日本の農林水産物・食品の輸出額を1兆円にするという目標を掲げている。同輸出額は2017年に過去最高の8,071億円となった。そのうち日本酒は186億7,900万円と、8年連続で過去最高を更新した。

2017年の日本からオーストラリアへの農林水産物・食品の輸出額は、前年比19.7%増で過去最高の148億円だった(輸出相手国として世界9位)。そのうち日本酒は、2016年が3億6,200万円(16.8%増)、2017年は3億9,600万円(9.4%増)と、過去6年間で2倍に増加した。オーストラリアは日本酒の輸出先としても9位になっている。

オーストラリアのアルコール飲料市場では、以前はビールが中心であったが、食事と一緒に楽しめる「食中酒」としてワインの消費が伸び、1人当たりの消費量で同程度になってきている。日本酒も食中酒として、主に都市部や富裕層の間で消費が進んでいる。市場規模はまだ小さいものの、近年の日本食ブームや、消費者の嗜好(しこう)の多様化も日本酒の浸透を後押ししている。日本酒の需要は今後、拡大することが期待されている。

商談会では日本酒の拡大に確かな手応え

商談会には日本酒造組合中央会メンバーの酒蔵17社と、オーストラリアの輸入業者、卸売業者、飲食店関係者らが参加した。出展者は自社の日本酒の特徴を説明しつつ、来場者のニーズに合った商品を紹介した。各ブースでは試飲することも可能で、来場者は出展者の説明を聞きつつ、自らの舌で日本酒を確かめた(注1)。ソムリエやレストラン関係者からは、既に自社で取り扱っている日本酒との違いや、差別化を図れるポイントを出品者から聞き取りする光景が見られた。

出展者からは「シドニーでの日本酒商談会に、これだけ多くの来場者が来てくれることに驚いた。『大吟醸、純米酒といったタイプの違いは何か』とか『西洋料理に合う日本酒はどれか』といった価格以外に関する質問も多く、オーストラリアにおける日本酒展開の可能性を感じた」と手応えを語った。

また、来場者からは「既にオーストラリアには日本酒が普及しているが、今回のイベントを通じて日本酒のさらなる可能性を実感した」といった意見もあった。一方で、「オーストラリア人にとって日本酒の産地や酒蔵の違いを理解することは簡単ではない。差別化を図るためには継続的なプロモーションが必要だ」との声も聞かれた。


商品説明を受けるバイヤー
(ジェトロ撮影)

活気あふれる商談会会場(ジェトロ撮影)

日本酒を試飲するバイヤー(ジェトロ撮影)

説明に聞き入るバイヤー(ジェトロ撮影)

セミナー開催を通じて日本酒の正しい知識を普及

併催した日本酒普及セミナーでは、日本酒造組合中央会の濱田由紀雄理事が日本酒の特徴や製造方法など日本酒の基礎について講演した。また、Wine & Spirit Education Trust(WSET)認定講師のリー・ハドソン氏が日本酒とワインの違い、西洋料理とのペアリング方法について詳しく解説した。

ハドソン氏は参加した各酒蔵が提供した日本酒4種類のテイスティングを行い、製品ごとの特徴を説明した。同氏は日本酒と西洋料理の親和性の高さについて言及し、「オーストラリアのファインダイニング(注2)やフュージョン料理(注3)のレストランで、日本酒の消費をさらに拡大していくことが可能」だとした。

セミナーの聴講者は「日本酒の特徴がよく分かった。オーストラリア人の嗜好を意識しつつ、地元レストランに日本酒を提供する上でのヒントになった」などの意見を寄せた。


講演する日本酒造組合中央会の濱田理事
(ジェトロ撮影)

WSET認定講師のハドソン氏(ジェトロ撮影)

4種類の日本酒テイスティング(ジェトロ撮影)

イベント概要

イベント名:
日本酒商談会 in シドニー
主催:
ジェトロ、日本酒造組合中央会
後援:
在シドニー日本総領事館、ソムリエ・オーストラリア、日本政府観光局(JNTO)
日時:
2018年6月21日(木曜)13時~16時
会場:
シャングリラ・ホテル シドニー 3階
参加企業:
(17社):国稀酒造(北海道)、秋田銘醸(秋田県)、出羽桜酒造(山形県)、吉乃川(新潟県)、今代司酒造(新潟県)、ほまれ酒造(福島県)、関谷醸造(愛知県)、福井酒造(愛知県)、舩坂酒造店(岐阜県)、月桂冠(京都府)、神戸酒心館(兵庫県)、五條酒造(奈良県)、中野BC(和歌山県)、賀茂鶴酒造(広島県)、千代むすび酒造(鳥取県)、天吹酒造(佐賀県)、八鹿酒造(大分県)。

注1:
オーストラリアでは公共の場で酒類を提供する際、RSAと呼ばれるライセンス保持者以外は来場者に酒類をサーブすることができない。
注2:
ファインダイニングとは、欧米諸国におけるフードサービスの業態分類の1つで、最も客単価が高く、サービスの質が高い高級料理店を指す。
注3:
フュージョンは「融合」の意味。日本のほか、フランス、イタリア、中華など、それぞれの料理が合わさった多国籍料理のこと。
執筆者紹介
ジェトロ・シドニー事務所 事業推進部 部長補佐
藤原 琢也(ふじわら たくや)
2016年、ジェトロ入構。農林水産省系の独立行政法人に勤務(2001~2015年)後、2016年、ジェトロ農林水産・食品部に配属。2017年よりジェトロ・シドニー事務所に配属。専門は農業分野(牛乳・乳製品、牛肉などの畜産品、食品など)。
執筆者紹介
ジェトロ農林水産・食品部加工食品・酒類支援課 課長代理
内田 政義(うちだ まさのり)
2016年8月より加工食品・酒類支援課にて日本産酒類の輸出促進事業を担当。