ロシア中小企業インタビュー(3)地元ニーズに寄り添うサービスで州内シェアトップに

2018年12月6日

トゥーラ州でセキュリティーシステムの開発から導入までを行うブレビスは、プラント向けだけでなく、質の高いサービスが買われて公共安全サービスの分野で地元官公庁との取引も行い、州内シェアはトップだ。同社のゼネラルディレクター、アントン・ススリン氏とコマーシャルディレクターのリャハビチ・アルチョム氏に企業概要や経営状況について聞いた(2017年12月)。ロシア中小企業インタビュー連載の3回目。

顧客のニーズに合わせたサービスの提案が売り

質問:
企業概要について。
答え:
2009年に創業し、防犯や入室管理などのセキュリティーシステムの開発および導入を行っている。機器の製造は行っていない。公共の安全や工業のセキュリティーを主にサポートしている。社員は72人で、設計技術部、販売部、インターネットマーケティング部、総務部などに分かれる。2017年の年間売上高は約300万ドルだ。トゥーラ州政府やトゥーラ市政府へのセキュリティー監視システムの導入実績もある。同分野ではトゥーラ州でトップシェアを誇る。
他社機材の営業代行も担っており、売り上げの10%程度になる。日本メーカーの製品を州内企業へ導入した実績もある。メンテナンスサービスも行っているが、新規システム導入の方が案件として多い。

ゼネラルディレクターのアントン・ススリン氏(右)とコマーシャル
ディレクターのリャハビチ・アルチョム氏(左)(ジェトロ撮影)
質問:
販売戦略について。
答え:
品質と信頼性を重視しているため、価格重視の顧客を対象としていない。営業地域はトゥーラ州内に重点を置いている。大企業は、州規模の事業に見向きもしないので脅威ではない。まず、州内で高品質なサービスを提供できなければ、外にも出ていけないと考えており、現状、州外や海外への積極的な展開は考えていない。
新規顧客の開拓は口コミが有効だ。また、トゥーラ州の工業団地から入居企業情報を入手して営業している。インターネット広告からの受注もある。受注は工場から直接受けることが多い。建設中の工場の場合は、建設会社からオファーを受ける場合もある。受注量は州の政策の影響を受ける。主要顧客である工業団地の進出企業数に影響するためだ。現職の州知事は外国企業誘致に積極的なため、受注も増えている。
質問:
資材の調達や在庫管理はどのように行っているか。
答え:
ケーブル類はロシア国内で調達しているが、機器類はすべて輸入している。自社倉庫を持っているので、ケーブルなどの汎用(はんよう)製品やよく消費されるものは在庫している。
質問:
財務管理はどうしているか。
答え:
銀行から融資を受けている。案件の規模によって、融資元や条件を使い分けている。融資を受ける場合、金利が問題となるが、国や地方の補助プログラムをうまく活用している。ただし、補助額には上限があるため、必要金額に満たないこともある。
決済リスクは顧客の支払い条件に合わせて、前払い、分割払い(金利付き)、後払いと分けている。しかし、実際はほとんどが後払い。特に国や州、国営企業は後払いが多い。公共調達で支払いが遅滞することは過去にあったが、最近は全くない。法定の支払い期限が30日から10日まで短縮されたので、改善傾向にある。
質問:
政府が推進する輸入代替政策により、公共調達への参入に影響はあるか。
答え:
セキュリティーシステムに使用するハイテク機器は利用できる国産品がないため、公共調達における国産品優遇のメリットは受けていない。
質問:
国や地域行政からの支援を受けているか。
答え:
トゥーラ州政府から、リース関連の補助金を受けている。コンプライアンス管理が厳しい官公庁からよく受注しているためか、税務署からのチェックが厳しいと感じる。違反歴がないにもかかわらず、頻繁に検査に来ることが煩わしい。
質問:
日本企業との協業の可能性はあるか。
答え:
日ロ間の協力で進めているスマートシティープロジェクトに関心がある。現在はボロネジとウラジオストクがモデルシティだが、将来的にトゥーラ市のスマートシティー化に向けて、日本企業と技術協力したい。
インタビュー先企業情報
企業名 ブレビス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
所在地 ロシア・トゥーラ州
主な事業、取扱製品・サービス プラント向け監視システム設計・施工
日本企業への提案や関心事項 ロシアにおけるスマートシティー開発に向けた協業
執筆者紹介
ジェトロ・モスクワ事務所
齋藤 寛(さいとう ひろし)
2007年、ジェトロ入構。海外調査部欧州ロシアCIS課、ジェトロ神戸を経て、2014年6月より現職。ジェトロ・モスクワ事務所では調査業務、進出日系企業支援業務(知的財産保護、通関問題)などを担当。編著にて「ロシア経済の基礎知識」(ジェトロ、2012年7月発行)を上梓。
執筆者紹介
ジェトロ海外調査部欧州ロシアCIS課
戎 佑一郎(えびす ゆういちろう)
2012年、ジェトロ入構。関東事務所、京都事務所を経て、2017年より現職。