四川省、鉄道輸送の拡充で欧州が近くに(中国)

2018年8月23日

四川省の省都である成都市中心部から北北東に約40キロ、車で約1時間の場所に青白江鉄道ターミナルがある。同ターミナルは、成都と欧州を結ぶ国際貨物鉄道「蓉欧快鉄」(蓉は成都の別称)の出発点となっており、「一帯一路」構想における「一帯(シルクロード経済ベルト)」の重要な役割を担う拠点の1つだ。

欧州14都市を結ぶ蓉欧快鉄

2013年に運行を開始した蓉欧快鉄は、成都とポーランド・ウッチ間を主軸としつつ、2018年6月現在、ドイツ・ニュルンベルク、オランダ・ティルブルフ、モスクワなど14都市と成都を結んでいる。年間の運行本数は、2013年の31本から増加し続けており、2014年45本、2015年103本、2016年520本、2017年には1,012本に達した。

青白江鉄道ターミナル(左)と、同ターミナルでの「蓉欧快鉄」の紹介映像(右)

成都税関の統計データ(金額ベース)でも、鉄道を利用した貿易が増えていることが分かる。輸入も増えてはいるが、特に輸出の伸びが大きく、その差は年々拡大する傾向にある。2015年に3億ドルだった鉄道輸出は2017年には33億8,000万ドルとなり、10倍以上に増えた(表1参照)。輸出総額に占める鉄道輸出の割合も、2015年の1.8%から2017年には12.2%と比率が高まっている(表2参照)。

表1:成都税関経由の貿易額(鉄道) (単位:100万ドル)
項目 2015 2016 2017
輸出 296 879 3,386
輸入 11 82 501
合計 307 961 3,886
輸出-輸入 285 798 2,885
出所:
グローバル・トレード・アトラスよりジェトロ作成
表2:成都税関経由の輸出額(輸送形態別) (単位:100万ドル)
項目 2015 2016 2017
鉄道 296 879 3,386
航空 11,792 12,779 19,483
船舶 3,915 2,989 4,304
その他 597 1,119 3,917
16,303 16,886 27,704
鉄道の割合(%) 1.8 5.2 12.2
出所:
グローバル・トレード・アトラスよりジェトロ作成

2015~2017年の直近3年の成都税関の輸出額上位3品目は、自動データ処理機械など、モニターなど、液晶デバイスなどで、輸出先国のトップ3は、オランダ、ポーランド、ドイツの順となっている。一方、輸入品目は自動車部品や自動車、紡績準備機械、遠心分離機、綿糸、調製食料品、飲料、アルコールなど多岐にわたっている。なお、青白江鉄道ターミナルには、輸入品の直売ショップがあり、欧州各国のワインや日用品などが並んでいる。


青白江ターミナルのショップに並ぶ輸入品(ワイン、粉ミルクなど)

ターミナル敷地内にある中国ネット通販大手JD(京東)の倉庫

蓉欧快鉄は今後、チベット自治区のラサからインドのコルカタ、ニューデリー、パキスタンのラホール、イランのテヘランを経由してトルコのイスタンブールに至る路線のほか、雲南省からミャンマー、タイ、シンガポールに至る路線などが計画されている。また、2017年4月に設置された中国(四川)自由貿易試験区には蓉欧快鉄のターミナルがある青白江エリアも含まれており、成都を中心とした鉄道の物流ネットワークの構築がより一層進んでいくとみられる。 成都には15カ国の領事館が設置されており、うち欧州ではドイツ、フランス、チェコ、ポーランド、スイス、オーストリアの6カ国が領事館を置いている。四川省は中国内陸部に位置しているので、日本からは遠く感じるが、欧州の人々からみれば中国市場の出入り口とも言えそうな距離感ではないだろうか。

執筆者紹介
ジェトロ・成都事務所 所長
田中 一誠(たなか かずしげ)
2005年、ジェトロ入構。対日投資課、地域支援課、ジェトロ・上海事務所、企画課、ものづくり産業課を経て2018年2月よりジェトロ・成都事務所勤務。