第2四半期の貿易赤字は3期ぶりに減少(米国)
2018年10月17日
第2四半期(4~6月)の貿易は、輸出が前期比3.4%増の6,384億ドル、輸入は0.1%増の7,722億ドルで、貿易赤字額は前期より202億ドル少ない1,338億ドルとなった。輸出は、エネルギー関連製品や大豆などが押し上げた。輸入では、携帯電話を含む家庭用品などが押し下げ要因となり、エネルギー関連製品などが押し上げ要因となった。鉄鋼、アルミ製品の輸入額は減少した。対中国赤字は8期ぶりに減少し953億ドルとなった。
輸出超で赤字は減少
商務省が9月19日に発表した第2四半期の貿易統計(国際収支ベース、季節調整済み)によると、輸出(財・サービス)は前期比3.4%増の6,384億ドル、輸入は0.1%増の7,722億ドルとなった(表1、図参照)。その結果、貿易赤字額は3期ぶりに減少し、前期より202億ドル少ない1,338億ドルとなった。財、サービスの内訳は、財が2,032億ドルの赤字、サービスが693億ドルの黒字となった。
区分 | 2017年 | 2018年 | ||||||||||
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4Q | 1Q | 2Q | 4月 | 5月 | 6月 | |||||||
金額 |
前期比 (貿易収支は差額) |
金額 | 前期比 (貿易収支は差額) | 金額 | 前期比 (貿易収支は差額) | 金額 | 前期比 (貿易収支は差額) | 金額 | 前期比(貿易収支は差額) | 金額 | 前期比 (貿易収支は差額) | |
輸出 | 605,916 | 2.9 | 617,437 | 1.9 | 638,390 | 3.4 | 210,527 | 0.3 | 214,668 | 2.0 | 213,195 | △ 0.7 |
財 | 401,939 | 3.6 | 411,442 | 2.4 | 429,238 | 4.3 | 141,189 | 0.2 | 144,931 | 2.7 | 143,118 | △ 1.3 |
サービス | 203,977 | 1.3 | 205,994 | 1.0 | 209,152 | 1.5 | 69,338 | 0.5 | 69,738 | 0.6 | 70,077 | 0.5 |
輸入 | 753,742 | 4.4 | 771,426 | 2.3 | 772,202 | 0.1 | 256,039 | △ 0.2 | 257,229 | 0.5 | 258,934 | 0.7 |
財 | 614,317 | 5.1 | 632,244 | 2.9 | 632,396 | 0.0 | 209,609 | △ 0.4 | 210,736 | 0.5 | 212,051 | 0.6 |
サービス | 139,426 | 1.6 | 139,182 | △ 0.2 | 139,806 | 0.4 | 46,430 | 0.4 | 46,493 | 0.1 | 46,883 | 0.8 |
貿易収支 | △ 147,826 | △ 15,035 | △ 153,989 | △ 6,163 | △ 133,812 | 20,177 | △ 45,512 | 1,181 | △ 42,561 | 2,951 | △ 45,739 | △ 3,178 |
財 | △ 212,378 | △ 15,555 | △ 220,802 | △ 8,424 | △ 203,158 | 17,644 | △ 68,420 | 1,029 | △ 65,806 | 2,614 | △ 68,933 | △ 3,127 |
サービス | 64,551 | 519 | 66,812 | 2,261 | 69,346 | 2,534 | 22,908 | 151 | 23,245 | 337 | 23,194 | △ 51 |
- 出所:
- 商務省データを基に作成
大豆輸出が増加
財貿易をみると、輸出が前期比4.3%増の4,292億ドル、輸入が0.0%増の6,324億ドルとなった(表2参照)。
輸出を主要財別にみると、工業用原材料、食料品・飲料、資本財などが伸びに寄与した。個別財では原油、燃料油などのエネルギー関連製品(前期比15.0%増)や大豆(2.2倍)などが押し上げた。原油は、価格の上昇などが影響した。大豆は価格下落により、一部地域からの買い付けが増加したことなどが影響したとみられる。
輸入を主要財別にみると、消費財、自動車・同部品が減少し、工業用原材料、資本財などが伸びた。個別財では、携帯電話を含む家庭用品(10.4%減)などが押し下げ要因となり、原油などのエネルギー関連製品(3.9%増)などが押し上げ要因となった。3月23日に発動された1962年通商拡大法232条による追加関税の対象品目になった鉄鋼・アルミニウム製品は、4月から6月にかけてそれぞれ29.2%減、20.9%減となった(注)。
なお、サービスについては、輸出では金融サービス、特許使用料、旅行など、輸入では、輸送、通信サービス、金融サービスなどがそれぞれの伸びに寄与した。
区分 | 主要財 | 金額 | 前期比 | 寄与度が最大の個別財 (カッコ内寄与度) |
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輸出 | 合計 | 429,238 | 4.3 | ― |
食料品・飲料 | 40,521 | 21.5 | 大豆(17.6) | |
工業用原材料 | 134,571 | 7.3 | エネルギー関連製品(原油を含む)(5.6) | |
(うち原油) | 11,640 | 37.2 | ― | |
資本財 | 141,647 | 2.5 | 民間航空機用エンジン・部品(1.3) | |
自動車・同部品など | 40,334 | △ 4.4 | 乗用車(カナダ向け以外)(△2.0) | |
消費財 | 51,282 | △ 0.6 | 宝飾品(△1.6) | |
その他 | 20,884 | 1.1 | ― | |
輸入 | 合計 | 632,396 | 0.0 | ― |
食料品・飲料 | 37,089 | 0.2 | 蒸留酒など(0.7) | |
工業用原材料 | 146,228 | 2.8 | エネルギー関連製品(原油を含む)(1.7) | |
(うち原油) | 41,368 | 4.9 | ― | |
資本財 | 174,200 | 2.1 | コンピュータ(0.5) | |
自動車・同部品など | 90,150 | △ 2.9 | 部品・周辺機器(カナダから以外)(△2.4) | |
消費財 | 157,413 | △ 4.0 | 家庭用品(携帯電話を含む)(△3.3) | |
その他 | 27,316 | 7.2 | ― |
- 出所:
- 商務省データを基に作成
対中赤字は8期ぶりに減少
財貿易を主要国・地域別にみると、輸出ではカナダ(前期比1.9%減)、ブラジル(2.0%減)で減少したものの、EU(5.8%増)、サウジアラビア(5.4%増)などの伸びが大きかった。輸入では中国(5.6%減)、ブラジル(1.6%減)、EU(0.0%減)で減少したものの、アジアNIES(5.7%増)、インド(4.9%増)、カナダ(4.8%増)の伸びが大きかった(表3参照)。
主要国・地域別の貿易収支をみると、中国への輸出額は3.7%増加したものの、輸入額が5.6%減少した結果、対中国赤字は8期ぶりに減少し953億ドルとなった。対日貿易収支は、輸出額の伸びが輸入額の伸びを上回り、貿易赤字は9,800万ドル減少し、179億ドルとなった。EUに対する赤字は46億ドル減の383億ドル、北米自由貿易協定(NAFTA)に対する赤字は52億ドル増え、279億ドルとなった。
国・地域 | 輸出 | 輸入 | 貿易収支 | |||
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金額 | 前期比 | 金額 | 前期比 | 金額 | 前期との差 | |
世界計 | 429,238 | 4.3 | 632,396 | 0.0 | △ 203,158 | 17,644 |
カナダ | 74,950 | △ 1.9 | 82,767 | 4.8 | △ 7,817 | △ 5,239 |
メキシコ | 66,380 | 0.6 | 86,446 | 0.4 | △ 20,066 | 11 |
中国 | 34,876 | 3.7 | 130,151 | △ 5.6 | △ 95,275 | 8,890 |
日本 | 18,549 | 4.1 | 36,498 | 1.8 | △ 17,949 | 98 |
EU | 82,295 | 5.8 | 120,642 | △ 0.0 | △ 38,347 | 4,588 |
アジアNIES | 39,977 | 2.0 | 38,364 | 5.7 | 1,613 | △ 1,295 |
インド | 7,991 | 2.1 | 13,662 | 4.9 | △ 5,671 | △ 467 |
サウジアラビア | 3,822 | 5.4 | 5,530 | 22.2 | △ 1,708 | △ 810 |
ブラジル | 9,586 | △ 2.0 | 7,030 | △ 1.6 | 2,556 | △ 79 |
- 出所:
- 商務省データを基に作成
直近では赤字が増加
直近2カ月の貿易赤字(国際収支ベース、季節調整済み)は、7月(財・サービス)が前月比41億ドル増、8月が34億ドル増と拡大した。両月ともに主に財の輸出が減少(7月:1.6%減、8月:1.3%減)し、財の輸入が増加(7月:0.9%増、8月:0.8%増)したことによる。7月から8月にかけて財の輸出は、大豆、航空機、原油、コンピュータ周辺機器などが減少し、輸入は携帯電話を含む家庭用品やトラックなどが増加した。
- 注:
- 1962年通商拡大法232条に基づいて鉄鋼とアルミニウム製品へ追加課税された品目をそれぞれ合計したところ、減少がみられた。
- 執筆者紹介
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ジェトロ・ニューヨーク事務所 リサーチャー
大原 典子(おおはら のりこ) - 民間企業勤務を経て2013年よりジェトロ・ニューヨーク勤務。自動車産業を柱に米国の産業調査を担当。