2020年米大統領選挙の主な民主党候補者とトランプ大統領への評価
意見が分かれる民主・共和党の各党支持者

2019年6月11日

2020年米国大統領選挙に向けて、民主党から20人余りの候補者が予備選への立候補を表明した。最近の各種世論調査で、支持を集める上位者が明らかとなっている(表1、表2参照)。中でも、オバマ政権の副大統領だったジョー・バイデン氏の支持が最も高い。民主党候補者やドナルド・トランプ大統領について、世論調査結果に見る国民の反応をまとめた。

再選を目指すトランプ大統領との対決を想定した調査では、民主党の主要6候補のうち5人がトランプ氏を上回る支持を集めた(表3参照)。

表1:民主党の大統領予備選では、誰に投票するか。(単位:%)
名前 キニピアク大学
5月調査
エマーソン大学
5月調査
ジョー・バイデン 35 33
バーニー・サンダース 16 25
エリザベス・ウォレン 13 10
カマラ・ハリス 8 10
ピート・ブッティジェッジ 5 8
ベト・オルーク 2 3
コーリー・ブッカー 3 1

出所:キニピアク大学、エマーソン大学

表2:2020年大統領選挙の民主党の主な候補者
名前 年齢(歳) 政治経験
年数(年)
現職・前職 SNSなどで言及した主な項目
ジョー・バイデン 76 44 オバマ政権の副大統領、元連邦上院議員(デラウェア州) 教育制度
バーニー・サンダース 77 38 現連邦上院議員(バーモント州) ヘルスケア、企業政策
エリザベス・ウォレン 69 10 現連邦上院議員(マサチューセッツ州) 企業政策、経済格差
カマラ・ハリス 54 16 現連邦上院議員(カリフォルニア州) マイノリティ差別、教育制度
ピート・ブッティジェッジ 37 17 現インディアナ州サウスベンド市長 経済格差、外交政策
ベト・オルーク 46 14 元連邦下院議員(テキサス州) 教育制度、移民政策
コーリー・ブッカー 49 17 現連邦上院議員(ニュージャージー州) 司法制度、マイノリティ差別

出所:各種報道を基にジェトロ作成

表3:ドナルド・トランプ氏と民主党候補A氏の直接対決では、いずれに投票するか。(単位:%)
民主党候補 民主党候補
A氏
ドナルド・
トランプ
ジョー・バイデン 54 46
バーニー・サンダース 54 46
ベト・オルーク 52 48
エリザベス・ウォレン 51 48
カマラ・ハリス 51 49
ピート・ブッティジェッジ 50 50

出所:エマーソン大学 5月調査

ヘルスケアを重視する民主党候補

4月下旬に米国NBCニュースと「ウォ―ル・ストリート・ジャーナル」紙が共同で実施した世論調査では、「政府が優先的に取り組むべき課題の上位2つは何か」という問いに対して、第1位として挙がったのは、ヘルスケア(24%)、移民・国境警備(18%)、雇用創出・経済発展(14%)という結果だった(表4参照)。2019年第1四半期(1~3月)の実質GDP成長率が3.2%(2019年5月14日付ビジネス短信参照)、失業率が3.6%と好景気を反映して、政府の課題として経済よりもヘルスケアに意識が向けられているという(注1)。

表4:政府が優先的に取り組むべき課題の上位2つは何か。(単位:%)
課題 第1位 第2位
ヘルスケア 24 18
移民・国境警備 18 11
雇用創出・経済発展 14 18
国家安全保障・テロ対策 11 14
気候変動 11 10
国家債務・歳出 11 12
銃規制 5 7
貿易協定 2 5

出所:NBCニュース、ウォ―ルストリートジャーナル紙

バイデン氏に次いで支持を集めるバーニー・サンダース氏は、4月10日に14人の民主党上院議員(注2)とともに、国民皆保険制度の法案「メディケア・フォー・オール2019」を発表した。この法案は、国民の収入にかかわらず、必要な時に必要な医療を受けることを目指している。効率的な医療業務を行うことで、年間5,000億ドルを削減できるという。

国民皆保険制度が強く支持されているわけではない。カリフォルニア州で4月に実施されたキニピアク大学の世論調査では、ヘルスケアシステムに関して、「システムの向上を希望する」(55%)、「システムの刷新を希望する」(34%)、「現状のままでよい」(4%)いう結果で、抜本的改革を希望するものではない。また、国民皆保険制度についての問いには、「良い」(47%)、「良くない」(40%)と評価が分かれている。現在のヘルスケアシステムにオプションを追加することの問いに対しては、「良い」が60%、「良くない」が26%と、オプションの選択肢を設けることが支持された。

厳しいトランプ大統領への評価

「トランプ大統領が共和党候補になったら、大統領選で投票するか」という問いには、キニピアク大学の3~5月の調査結果で、「投票しない」が過半数を占めている(表5参照)。

表5:トランプ氏が共和党候補になったら、大統領選で投票するか。(単位:%)
項目 3月調査 4月調査 5月調査
投票する 30 33 31
投票を検討する 13 13 12
投票しない 53 52 54

出所:キニピアク大学

同大の調査でトランプ大統領に対する意見を聞いたところ、2017年8月以降のデータでは、反対が賛成を上回っており、横ばいの状態が続いている(図参照)。

図:トランプ大統領に対する意見はどうか
2017年8月から2019年5月まで実施した8回の調査結果は、「賛成」は36~41%、「反対」は56~60%を推移。

出所:キニピアク大学

トランプ氏の大統領としての、あるいは各分野での仕事ぶりに関する評価は、経済分野だけ、「認める」が「認めない」を上回ったが、「認める」は半数を割っている。その他については、「認める」が10%ポイント以上の差で、「認めない」を下回った(表6参照)。2019年上半期まで経済の好調が続き、経済分野では評価されているが、その他の分野での評価にはつながっていない。

表6:ドナルド・トランプ大統領の仕事ぶりについてどう思うか。(単位:%)
項目 認める 認めない
全体 共和党支持者 民主党支持者 全体 共和党支持者 民主党支持者
大統領として 38 86 2 57 10 98
経済分野 48 91 12 45 8 81
外交政策 37 81 2 58 13 97
通商分野 39 82 4 53 11 89
対中国政策 40 80 8 50 10 83
対イラン政策 37 79 4 47 9 83

出所:キニピアク大学 5月調査

しかし、トランプ氏の評価について回答結果の内訳を見ると、共和党支持者、民主党支持者で「認める」と回答した率はそれぞれ79~91%、2~12%、「認めない」の回答率は、8~13%、81~98%と、両党支持者の回答は正反対となっており、実際の選挙の行方は世論調査での支持をどれだけ実際の投票につなげていくかにかかっているといえる。

産業界からも懸念の声が上がる1962年通商拡大法232条に基づく自動車・同部品への輸入制限的措置の実施は11月まで延期すると発表された(2019年5月20日付ビジネス短信参照)ものの、長期にわたるとみられる対中貿易摩擦が経済に与える影響が今後も注目される。


注1:
2015年4月の調査結果では、第1位に挙げられたのは、雇用創出・経済発展(29%)、国境警備・テロ(21%)、国家債務・歳出(17%)だった。
注2:
民主党大統領候補のコーリー・ブッカー氏、キルステン・ジリブランド氏、カマラ・ハリス氏、エリザベス・ウォレン氏を含む。
各種世論調査の調査時期、対象者数
キニピアク大学 3月調査 3月21日~25日、1,358人(うち、民主党支持者559人)
キニピアク大学 4月調査 4月26日~29日、1,044人(うち、民主党支持者419人)
キニピアク大学 5月調査 5月16日~20日、1,078人(うち、民主党支持者454人)
エマーソン大学 5月調査 5月10日~13日、429人
NBCニュース、ウォ―ルストリートジャーナル調査 4月28日~5月1日、900人
キニピアク大学 カリフォルニア州調査 4月3日~8日、1,005人
執筆者紹介
海外調査部米州課 課長代理
松岡 智恵子(まつおか ちえこ)
展示事業部、海外調査部欧州課などを経て、生活文化関連産業部でファッション関連事業、ものづくり産業課で機械輸出支援事業を担当。2018年4月から現職。米国の移民政策に関する調査・情報提供を行っている。