特集:2018年の対中直接投資動向対外直接投資総額に占める中国の割合が4割を割る(台湾)

2019年5月29日

2018年の台湾の対中直接投資(認可ベース)は、件数が前年比25.2%増の726件、金額が同8.1%減の84億9,773万ドルとなった。台湾企業の対外直接投資総額に占める中国の構成比は37.3%と4割を割った。

件数は2年連続で増加するも、金額は3年連続で減少

2018年の台湾の対中直接投資(認可ベース)は、件数が前年比25.2%増の726件、金額が8.1%減の84億9,773万ドルとなった。件数は、2年連続で増加したが、金額ベースでは3年連続でマイナスとなった。

台湾企業の対外直接投資総額に占める中国の構成比は37.3%と、前年(44.4%)から7.1ポイント低下した(図参照)。2016、2017年と4割台を維持していたものの、2018年はついに4割を割った。

図:台湾の対中直接投資(認可ベース)と
対外直接投資に占める対中投資の構成比の推移
対中直接投資(左目盛り)は、2004年69.4億ドル、2005年60.1億ドル、2006年76.4億ドル、2007年99.7億ドル、2008年106.9億ドル、2009年71.4億ドル、2010年146.2億ドル、2011年143.8億ドル、2012年127.9億ドル、2013年91.9億ドル、2014年102.8億ドル、2015年109.7億ドル、2016年96.7億ドル、2017年92.5億ドル、2018年85.0億ドル。 対中直接投資構成比(右目盛り)は、2004年67.2%、2005年71.1%、2006年63.9%、2007年60.6%、2008年70.5%、2009年70.4%、2010年83.8%、2011年79.5%、2012年61.2%、2013年63.7%、2014年58.5%、2015年50.5%、2016年44.4%、2017年44.4%、2018年37.3%。

出所:台湾経済部投資審議委員会の発表を基にジェトロ作成

中国以外の国・地域への投資については、英領カリブ海(中国を除いた金額ベースの構成比41.4%)が最も多く、前年比0.1%減の59億1,426 万ドル、次いで、米国(14.3%)が2.4倍の20億3,898万ドルとなった。そのほか、オランダ(7.8%)、バミューダ諸島(4.4%)がそれぞれ79.2倍、5.4倍と急増し、ベトナム(6.3%)は32.0%増だった。

業種別に台湾の対中投資額をみると、構成比最大(21.7%)の電子部品は前年比3.4%減の18億4,614万ドルだった(表1参照)。卸売・小売りは11億8,892万ドル(12.2%増)、化学材料は7億9,450万ドル(77.8%増)、卑金属は6億7,763万ドル(前年の2.4倍)と増加したものの、パソコン・電子製品・光学製品(28.6%減)、金融・保険(45.1%減)は前年に引き続きマイナスとなった。

表1:台湾の対中投資額上位10業種の件数および金額(2018年)(単位:件、100万ドル、%)(△はマイナス値)
業種 件数 金額 構成比 前年比
電子部品 56 1,846 21.7 △ 3.4
卸売・小売り 209 1,189 14.0 12.2
化学材料 11 795 9.3 77.8
パソコン・電子製品・光学製品 23 764 9.0 △ 28.6
卑金属 18 678 8.0 137.7
金融・保険 26 589 6.9 △ 45.1
自動車およびその部品 21 343 4.0 108.8
電力設備 26 299 3.5 51.1
機械設備 30 238 2.8 △ 17.1
プラスチック製品 13 204 2.4 55.7

出所:台湾経済部投資審議委員会の発表を基にジェトロ作成

江蘇省向けが最大、遼寧省向けが急増

省・自治区・直轄市別に台湾企業の対中投資をみると、構成比最大(25.8%)の江蘇省が前年比5.7%減の21億9,304万ドルだった(表2参照)。2位は広東省(構成比15.3%)で16.7%増、3位は浙江省(14.0%)で75.9%増とそれぞれ増加した一方で、4位の福建省(11.5%)は3.3%減、5位の上海市(11.3%)は7.1%減とそれぞれ減少した。上位5省・直轄市の構成比が77.9%と前年(66.6%)より上昇したのは、浙江省や広東省の寄与が大きい。浙江省は台湾塑膠工業や裕隆汽車製造による投資案件が、広東省は南亞塑膠工業や国巨による投資案件が増加に寄与した。 上位10省・直轄市でみると、投資額が最も大きく増加したのは遼寧省(3.2倍)だった。

表2:台湾の地域別対中直接投資(2018年)(単位:件、100万ドル、%)(△はマイナス値)
省・市 件数 金額 構成比 前年比
江蘇省 174 2,193 25.8 △ 5.7
広東省 138 1,297 15.3 16.7
浙江省 60 1,190 14.0 75.9
福建省 51 977 11.5 △ 3.3
上海市 140 964 11.3 △ 7.1
湖北省 23 304 3.6 95.1
安徽省 14 226 2.7 △ 40.7
山東省 15 222 2.6 △ 60.4
遼寧省 5 211 2.5 223.6
北京市 21 179 2.1 △ 43.7

注1:順位は金額順。
注2:件数は新規投資のみカウント。
出所:台湾経済部投資審議委員会の発表を基にジェトロ作成

前年に引き続き、上位案件の7割が製造業

個別の投資案件(金額順で上位10件)をみると、投資額が最も大きいのは、彰化商業銀行による彰化商業銀行(中国)設立案件だった。2位は台湾塑膠工業による台塑工業(寧波)への増資案件、3位は中国石油化学工業開発による江蘇威名石化への増資案件だった。なお、上位10件中8件が製造業で、上位10件の合計投資額に占める製造業の割合は70.6%、金融関連の割合は29.4%と、それぞれ前年と同水準を維持した。

執筆者紹介
ジェトロ海外調査部中国北アジア課 アドバイザー
嶋 亜弥子(しま あやこ)
2017年4月より現職。