タイ・チリFTAが発効、9割前後の関税を即時撤廃

(タイ、チリ)

バンコク事務所

2015年11月10日

 タイ・チリ自由貿易協定(TCFTA)が11月5日、発効した。発効に伴い、チリは全7,855品目のうちの90.8%に相当する7,129品目の関税を、タイは全9,625品目のうち86.8%に相当する8,351品目の関税を、それぞれ即時撤廃した。また、両国は発効から8年以内に、タイ側が指定する一部の例外品目(農産品など)を除き、原則全ての品目の関税を撤廃する。

<タイにとって南米2ヵ国目のFTA

 タイ、チリ両国は201011月、日本で開催されたAPEC首脳会議の会期中、両国首脳がFTA交渉を開始することを発表。その後、20114月に正式に交渉入りし、201310月にタイのインラック首相とチリのセバスティアン・ピネラ大統領(いずれも当時)との間で協定への署名が完了していた。本協定の発効に伴い、タイにとっては南米諸国との間で、ペルーとのFTA2011年末に発効)に次ぐ2ヵ国目のFTAが発効したことになる。また、チリは201510月に大筋合意に達した環太平洋パートナーシップ(TPP)の参加国であることから、TPP参加国12ヵ国のうち、9ヵ国との間でタイが発効済みFTAを有することになる。

 

 なお、タイ側の貿易統計によると、201519月のチリ向け輸出は47,829万ドルで、輸出全体に占める構成比は0.3%だ。主要輸出品目をみると、全輸出のうち73.9%を車両および同部品(関税分類:第87類)が占め、その大半は貨物自動車および乗用車となっている。一方、チリからの輸入は2735万ドルで、全輸入に占める構成比は0.14%。主要輸入品目としては、魚・甲殻類(第3類)が輸入全体の30.3%、木材パルプ(第47類)が20.4%を占める。

 

<タイ側の一部を除き、20231月には全品目で撤廃>

 FTAの発効に伴い、両国はそれぞれ表1のスケジュールで関税を撤廃する。即時撤廃品目はタイ側が86.8%、チリ側が90.8%に達する。例えば、タイからの最大の輸出品目である「貨物自動(ディーゼルエンジン搭載で貨物重量5トン以下のもの、HSコード:8704.21.29)」などの製品も、発効と同時にチリ側の関税(ベースレート6%)が即時撤廃されているほか、在タイ日本企業が関心を有する乗用車の分野でも、チリ側で大半の製品の関税が即時撤廃されている。なお、関税撤廃スケジュールに含まれないタイ側118品目については、その大半(105品目)が農産品だ。

 アピラディ・タントラポーン商務相は114日、プレス向け説明会の中で、「TCFTAにより、タイからの輸出製品のうち、特に自動車、シーフード缶詰、セメント、プラスチックペレット、ゴム、宝石・宝飾品などの品目が恩恵を受けるだろう。また、銅や鉱石などの原材料調達の面でも恩恵がある」との見解を示した。

 

 品目別の関税撤廃スケジュールの詳細については、商務省外国貿易局(DFT)のウェブサイトで閲覧できる。

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 また、原産地規則としては品目に応じて、表2の定める13のいずれかの規則が適用される。鉱工業製品に対しては、基本的に品目別規則が適用される。中でも、付加価値基準で40%以上を満たしている場合、もしくは関税分類変更基準で4桁レベルでの変更が加えられる場合に、原産品と見なされる基準が多く採用されている。

<フォームTCは発給日から1年間有効>

 なお、DFTが示すガイドラインによると、タイにおける輸出者は、TCFTAの特定原産地証明書(フォームTC)の発給に際し、DFTに対してオンラインで申請を行う。その際、所定の申請フォームへの必要事項の記入に加え、(1)インボイスの原本もしくはコピー、(2)船荷証券(BL)、航空運送上(AWB)もしくは国際輸送に関わるその他の書類、(3)当該輸出品の原産性を証明する適格品目証明書(2597類に属する品目の場合)、もしくは原産性確認登録フォーム(124類に属する品目の場合)、を添付する必要がある。なお、DFTから発給された原産地証明書(フォームTC)は、発給日から1年間有効となる。

 

 原産地規則および証明手続きの概要、また品目別の原産地規則の詳細は、いずれもDFTのウェブサイトで閲覧できる。

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品目別の原産地規則詳細外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

 

 

(伊藤博敏)

(タイ、チリ)

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