2016年は減税にかじ-家族控除枠の拡大や所得減税など-

(ハンガリー)

ブダペスト発

2016年01月25日

 2010年の政権交代以来、オルバーン政権は財政立て直しのため銀行税、公益事業税などさまざまな新税を導入してきた。新税は特定の業界に大きな負担をかけることとなったが、税収の安定につながった。2015年5月の国会では追加的な新税導入は不要との見解が政府から示されており、2016年税制ではこれに基づき、増税ではなく家族控除枠の拡大や、所得税・銀行税など特定業界にかかる税の減税など、負担軽減の方向へかじが切られた。

<個人消費のさらなる喚起策>

 オルバーン政権は2010年の発足以来、税収構造改革のために銀行税や公益事業税などさまざまな新税を導入し、一部の業界に大きな負担を求めてきた。この改革により税収が安定したため、20155月の国会では税務当局から追加的な新税導入の必要はないとの見解が示され、2016年税制は減税を主な内容としている。

 

 人口減少に歯止めをかけたい政府は、子供の数を増やす政策として2011年に導入した子供の数に応じた税控除の枠をさらに広げた。2015年までは3人以上の子供を持つ世帯への子供1人当たりの減税額が、2人までの額に対し3倍以上となっていたが、2人目を産むインセンティブとして有効ではなかったことから、子供を2人持つ家庭向けの税控除枠を25%引き上げる。これにより子供を2人持つ家庭は2015年に比べて手取り額が毎月5,000フォリント(約2,000円、1フォリント=約0.4円)増えることになる。

 

 経済危機以降、低迷していた個人消費は2014年から徐々に回復し始め、2016年は経済成長の牽引役となることが見込まれている。政府は個人消費のさらなる喚起のため、2013年に一律16%へと引き下げた所得税をさらに引き下げ15%とする。

 

 消費に対する課税を重視する政府は、27%と欧州最高水準の付加価値税の一律引き下げは行わなかったが、特定分野における付加価値税の減税を成長のインセンティブとして利用する。回復しつつある新築住宅市場のさらなる活性化のため、2016年から2019年に新築される150平方メートルまでのアパート、300平方メートルまでの一戸建てについて付加価値税を27%から5%に引き下げる。これにより、新たに5,000戸の新築を見込み、1,000億~1,200億フォリントの投資を呼び込む。また、投資は建築業界で5,0007,000人の雇用を生むと試算される。

 

 食肉用豚の卸にかかる付加価値税は2014年に27%から5%へ引き下げられていたが、この対象が小売りの食用豚にまで拡大する。この軽減税率は国内の豚肉業者が高い付加価値税のために周辺諸国に比べ競争力を失っていたことから、これを取り戻すために導入された。国内の業者はこの減税により競争力を取り戻し、売り上げも伸びてきたことから、より一層の競争力強化のために軽減税率の対象が拡大される。付加価値税の減税は脱税の防止にも役に立っており、今まで不正輸出をしていた企業を市場に呼び戻す効果もあった。

 

<銀行税など法人向けも減税>

 特定業界税の減税もインセンティブとして利用する。当初は時限税として導入され、その後恒久税とされた銀行税は引き下げが実施される。銀行税は利益に対する累進課税で、500億フォリントを超える利益には最高税率0.53%がかけられている。それが0.24%に引き下げられ、2017年には0.21%となる。最低税率は0.15%で変更はないが、国家経済省は2017年にはさらなる引き下げを行う意思があると発表している。

 

 2013年に導入された公益事業税にも減税枠が設けられた。公益事業税は電気・ガス供給会社、通信会社などが所有する地上または地下に設置されたケーブル、パイプなどにかかる税金だが、20161月以降に設置されるものに関しては5年間、公共事業税がかからない。ただし、高速通信網のためのケーブルは100メガビット毎秒以上の通信速度を持つ場合のみ対象となる。

 

 法人税に関しても優遇制度が導入されている。税引き前利益が前年利益の6倍を超える急成長をした場合、前年度の利益を超えた部分の法人税の支払いを2年先まで伸ばすことができる。これにより、手持ち資金に余裕を持たせることができる。その間に雇用を増加させる設備投資を行えば、支払いを伸ばした法人税の最大90%までの課税が控除されるようになっている。

 

(バラジ・ラウラ、三代憲)

(ハンガリー)

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