スペインでの焼きそばブームで販売好調-オタフクソース、米国・アジアから欧州にも進出-

(EU、スペイン、日本)

欧州ロシアCIS課

2017年09月12日

オタフクソース(広島市西区)の海外展開は、すし酢やソースを米国に輸出することから着手し、現在ではアジアや欧州へも輸出している。欧州への輸出は肉エキスなどを取り除くことで規制をクリアし、グルテンフリーの商品も検討中だという。執行役員で国際事業部長の宮田裕也氏と海外営業部営業1課長の河野聖人氏に、焼きそばブームのスペインなど欧州を中心とした海外事業の状況と今後の展開について聞いた(8月8日)。

お好み焼きを世界にと米国進出

ソースをはじめ調味料の開発・製造・販売を行うオタフクソースは1922年に創業し、20年ほど前からお好み焼きを世界に広めようと米国に進出し、1998年に米国法人のオタフクフーズ(Otafuku Foods)を設立した。その後、海外の顧客や在留邦人からの需要が増え、アジアや欧州へもソースなどの輸出も開始した。2013年に米国ロサンゼルス工場と中国青島工場、2016年にはマレーシア工場をそれぞれ設立するなど、米国とアジアでの事業の基盤を固めてきた。海外事業の占める売り上げは全体の約7%で、米国、中国、韓国、台湾と続く。

宮田部長は「東南アジアは多くの日系メーカーが進出しており、マレーシア工場ができるまでは価格面で厳しい競争となっていた」という。一方、欧州はある程度所得が高いため、商品が高くても買ってもらっていると説明する。その欧州へは20年ほど前から輸出を開始した。近年ではスペインとポルトガルでの販売が好調で、欧州での売り上げの半分を占め、英国、フランス、ドイツ、オランダ、イタリアがそれに続く市場になっているという。

カップ焼きそばがブームを拡大

スペインでの販売は年々増加している。その理由は、焼きそばブームだ。このブームは7年ほど前から始まり、レストランでの販売のみならずカップ焼きそばが登場したことで、一気に広まった。河野課長は「焼きそばはお好み焼きに比べて誰でも簡単に作れる手軽さがある。そのため日本食レストランでも採用されやすく浸透度が高い」と分析する。スペインでの売り上げの4分の3は業務用だ。当初は1,200グラムの紙パックの焼きそばソースを輸出していたが、いったん開封するとふたができないことなどから、ここ1年で容器の種類を増やし、利用時の不自由さを解消するようにしている。

欧州への輸出に当たっては、食品規制の壁がある。同社の商品では肉エキスなどが規制対象となるため、欧州向け商品からはこれらの素材を抜いて味を調整し、規制に対応している。日本で販売されているソースに比べてあっさりした味になるが、焼きそばソースやお好み焼きソースは現地で受け入れられやすい味だという。

ソースなどの商品は各国に直接輸出しているため、英国のEU離脱に伴う影響などは少ないとみている。また、日EU経済連携協定(EPA)により、日本から欧州へ輸出するソース類の7.7%の関税が撤廃された場合、価格競争の面ではプラスの影響があるが、一方で小口の注文が多いこともあり、同協定の利用手続きの煩雑さが懸念され、社内態勢を整備するかどうか検討する必要があると説明する。同社は以前、日・タイ経済連携協定(JTEPA)の利用を試みたが、手続きが煩雑だったため現在ではほとんど活用していないという。「(日EU・EPAの発効は)利用できるチャンスが増えるということなので、主流である小口の注文についてロットを増やすなど、関係先にメリットがあれば活用していきたい」と宮田部長は話した。

グルテンフリーの商品を開発

同社は、今後2年以内に海外売り上げを全体の10%にすることを目標としている。米国とアジアでは工場が稼働しており、今後は他のエリアへの営業拠点の進出も検討しているという。また、現地向けの商品としてグルテンフリーのソースを検討中で、欧州や米国の規制をクリアしているか検査機関を通じて確認している。ドイツ・ケルンで10月に開催される世界最大級の食品見本市・商談会「アヌーガ2017」でも、今後の欧州展開の方針を見極めるとしている。宮田部長は「富裕層だけでなく大衆層にも親しんで貰えないと真の意味でグローバル化はできない」と語った。

写真 海外営業で欧州を担当する河野課長(ジェトロ撮影)

(田中晋、鵜澤聡)

(EU、スペイン、日本)

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