欧州委、「欧州労働監督機関」の創設を提案

(EU)

ブリュッセル発

2018年04月06日

欧州委員会は、域内の労働者の移動に関するより円滑な対応の実現を目的とした「欧州労働監督機関(European Labour Authority)の創設に関する規則案」をこのほど発表した。欧州委は同規則案の発表に当たり、同機関を「域内越境派遣労働者」指令改正案(2016年5月30日記事参照)や、域内の社会保障制度の調和など、労働者の域内の公正な移動に関する現行のイニシアチブを補完し、その実施をより容易にするものと位置付けた。欧州委のジャン=クロード・ユンケル委員長は2017年9月の一般教書演説(2017年10月16日記事参照)で、同機関の設立の意向を示していた。

国境を越える労働争議の調停も視野に

欧州委によると、出身国以外の加盟国で生活・就労する域内の市民は約1,700万人(2017年)。欧州労働監督機関は、域内の自由な移動から得られる利益を最大化し、公正な労働力の移動を実現するために、個人と企業、加盟国の行政機関を支援することを目的としている。同機関創設の主な役割は次の3点だ。

  1. 市民や企業に対して、就業や研修の機会、自国以外の労働者を対象とする就業制度(mobility scheme)、また、他の加盟国での就労・滞在・事業展開に関する権利・義務に関する情報を提供する。
  2. 国境を越えた労働者の移動の保護・規制に関するEUルールの、全産業部門における容易かつ効果的な適用に向けて、加盟国の労働監督機関を支援する。支援の具体例として、加盟国の監督機関の間の情報交換の改善や、複数の加盟国が参加する能力開発や共同検査の実施への支援が挙げられる。
  3. 複数の加盟国の事業所を対象とする事業再編など、域内国境を越える労働争議において、調停などを行う。

欧州労働機関に関する規則案の成立には、欧州議会とEU理事会(閣僚理事会)での承認が必要だ。欧州委は、同機関の機能に関する実務的な側面を検討するために、利害関係者からなる助言グループを設立することで、規則を早期に成立させ、2019年内に業務を開始したい意向だ。

(村岡有)

(EU)

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