ASEAN、初の電子商取引協定に署名

(ASEAN)

バンコク発

2018年11月26日

第33回ASEAN首脳会議に併催するかたちで、11月12日に「ASEAN電子商取引協定」の署名式がシンガポールで行われた。同協定はASEANで初となる電子商取引(EC)分野の協定で、8月29日に開催された第50回ASEAN経済相会合で採択されていた。

第17回ASEAN経済共同体理事会(AECカウンシル)の冒頭あいさつで、シンガポールのチャン・チュンシン貿易産業相は、協定の発効により、電子商取引に関連する地域の貿易ルールが統合され、事業環境の改善につながるほか、消費者にとっても電子商取引を利用するに当たっての費用削減や迅速化、さらにはより強固な消費者保護をもたらすものだとして、期待を表明した。

シンガポール貿易産業省が公開したファクトシートによると、同協定に盛り込まれている要素は次のとおり。越境のデータ移動やサーバ設置義務に関する規定が盛り込まれている。なお、協定本文は11月22日時点でまだ公開されていない。

  1. 国内法制度整備:電子取引関連の法制度を維持し、もしくは可能な限り早期に導入することを約束。域内の電子商取引の活性化に資するような法制度の整備を促す。
  2. 透明性:電子商取引に関連する全ての関連法制を可能な限り早期に公表する。
  3. 協力:特に中小零細企業の電子商取引利活用を促すため、情報通信インフラ整備、教育・技術能力、オンライン消費者保護、電子商取引分野の法制度枠組み、オンライン個人情報保護を含むセキュリティー、電子決済、貿易円滑化、知的財産権、競争、サイバーセキュリティー、物流環境の整備を行う。
  4. 電子取引・貿易の促進:電子的税関申告書類など、ペーパーレスの貿易環境構築を促す。
  5. 越境のデータ流通、コンピュータ設備の設置:適切なセーフガード措置を条件とした、越境データアクセス、データ移動の容易化を促す。
  6. 物流:越境電子商取引におけるサプライチェーン費用の削減、迅速化および信頼性の向上の必要性を再認識する。
  7. 消費者保護・プライバシー:オンライン消費者保護、個人情報保護に関する条項を設けるとともに、透明性が高く、効果的な消費者保護措置の導入・維持、オンライン紛争解決手段の導入を促す。
  8. 技術中立性:産業界が自由に技術を選択・利用できるよう、技術中立性の概念を導入。
  9. 協定の見直し:デジタル化、デジタル経済の急速に変わり得る環境に対応し続けるため、協定を修正することを認める見直し条項を加える。

(蒲田亮平)

(ASEAN)

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