国会が新首相不信任を可決、政局の混乱続く

(スリランカ)

コロンボ発

2018年11月21日

スリランカの政局が混迷している。10月26日にシリセナ大統領はラージャパクサ前大統領を首相に任命したが(2018年10月29日記事参照)、国会は11月14日、新首相への不信任投票を実施し、賛成多数で可決した。大統領は不信任投票が正当な手続き(注1)を経ていないと認めなかったものの、その後、3回の不信任投票が行われ、いずれも賛成多数で可決している。大統領は11月9日に国会解散を表明しているが、解散に必要な3分の2以上の国会議員の賛成を得られていない。解散について最高裁判所は12月7日に最終判断を下す予定で、違憲と判断するとみられる。その場合国会は、解任されたウィクラマシンハ前首相を首相と認める公算が高い。

経済にも影響、公共事業の停滞も懸念

1カ月近く続く政局の混乱は、経済面にも影響を及ぼし始めている。スリランカ・ルピーは連日最安値を更新し、中央銀行は11月14日、利上げに踏み切った。通常11月の国会から本格化する次年度の予算審議も行われておらず、公共事業の停滞も予想される。大臣も実質的に不在のままで、各種許認可が進まない状況に陥っている。こうした状況に対し、セイロン商工会議所などの業界団体は声明を発表し、法にのっとった政治運営を求めた。また、進出日系企業は「国際社会から法治国家としての統率が取れていないと判断され、EUによる一般特恵関税の優遇制度(GSPプラス、注2)が廃止されることを最も懸念している」と、ビジネス環境の悪化を危惧している。

(注1)憲法では、首相への不信任決議案には20人以上の大臣の署名が必要と定められている。

(注2)2017年5月19日に復活し、対EU輸出で6,000品目以上の関税が免除となっている(2017年7月20日記事参照)。

(井上元太、ワーサラゲー・ラクナー)

(スリランカ)

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