ASEANサービス貿易協定が妥結、自由化が進展

(ASEAN)

バンコク発

2018年11月26日

ASEAN首脳会議に先立って、11月12日にシンガポールで行われた第17回ASEAN経済共同体理事会(AECカウンシル)において、「ASEANサービス貿易協定(ATISA)」の交渉妥結が確認された。同協定は、既存の協定である「ASEANサービス枠組み協定(AFAS)」の内容を強化したもの。8月のASEAN経済相会合におけるAFAS最終パッケージ交渉(第10パッケージ)の妥結・署名に続く、ASEANにおけるサービス貿易分野の大きな成果となった。

ATISAの最大の特徴は、自由化条件(注1)の設定方法として「ネガティブリスト形式」が採用されたことだ。AFASで採用されていたポジティブリスト形式は自由化を約束した分野を列挙するものだったが、ATISAでは「留保表」と呼ばれる、自由化の対象に含めない分野のみを記載する形式が採られている。留保されるサービス分野については、その法的根拠が付され、また留保分野以外は全て自由化対象となることから、ネガティブリスト方式の方が高い透明性を有するとされる。枠組み協定であるAFASに比べ、貿易協定であるATISAではより充実した規定が盛り込まれていることもあり、今後のASEANにおけるサービス投資・サービス提供の拡大に寄与することが期待される。

今回合意されたのはATISAの本文部分で、AFAS第10パッケージで達成したASEAN各国の自由化内容の留保表への転換作業や、それ以上の自由化推進に向けた留保表自体の交渉は今後、実施される見込みだ。

投資分野では非関税障壁の一部をより明確に禁止

投資分野では、既存のASEAN包括的投資協定(ACIA)の第4改定議定書が合意された。今回の改定は、(1)パフォーマンス要求(注2)へのより強い禁止措置、(2)留保表の細分化の2点を中心に行われた。前者については、ASEAN関連の自由貿易協定(FTA)協定で初めて、特定の措置を列挙し、禁止を強制的に義務付ける条項が盛り込まれた。後者については、これまでACIAでは現在取られている投資制限措置も、将来制限を強化する可能性のある分野の包括的留保も同じリストに記載されていたが、第4改定議定書ではそれぞれが異なるリストに記載されることとなった。これらは、いずれもASEANへの投資を行う際の透明性の向上に資するものと評価できる。

(注1)自由化の対象とされているのは、(1)外国からのサービス提供、(2)その国でのサービス消費(海外旅行先のホテル宿泊など)、(3)サービス拠点の設置(サービスを提供するための法人設立)、(4)人の移動(外国人の就労など)で、特に(3)については外国資本の受け入れ比率の拡大(市場アクセス)、地場資本と等しい扱いの確保(内国民待遇)の2点で自由化が図られる。

(注2)投資の条件として、国内での調達義務や輸出制限、技術移転などの特定措置の履行を義務付けるもの。

(蒲田亮平)

(ASEAN)

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