スウェーデン国会、暫定政府予算案を否決

(スウェーデン)

ロンドン発

2018年12月28日

スウェーデンの政治的混迷が深まっている。スウェーデン国会は12月12日、中道左派の社会民主労働党のステファン・ロベーン党首が率いる暫定政府予算案を否決し、中道右派の穏健党とキリスト教民主党の合同予算案(以下、合同予算案)を採択した。投票に先立ち、中央党および自由党が白紙投票をすると宣言する一方、極右のスウェーデン民主党が合同予算案を支持すると表明したことにより、暫定政府予算案141票、合同予算案153票となった。

ステファン・ロベーン暫定政府首相は、合同予算案は「紙ナプキンに書かれたメモ書きだ(じっくり考えられたものではない)」と批判した。合同予算案では、各種減税や防衛予算増額などが盛り込まれる一方、公共職業安定所の機構改革と予算減、2018年に設置されたばかりの男女平等当局の廃止(2019年は規模を縮小して存続)など、複数の当局の予算減・廃止を含んでいる。報道によると、関連の当局と事前協議はされておらず、寝耳に水の状態だという。ストックホルム商工会議所は合同予算案について航空税廃止は喜ばしいものとし、医師連盟はプライマリーケア(注)への予算増は歓迎すべきものとする。その一方、社会科学の学位を修めた就業者を組員とする労働組合SSRが失業対策プログラムの廃止は望ましくないと批判し、児童福祉団体セーブ・ザ・チルドレンが移民対策分野での予算削減に反対するなど、賛否両論がある。

スウェーデンにおいて、政府が野党予算案に基づいて政権運営をするのは今回が初めてではない。2014年秋にも2015年予算案が、政府予算案ではなく野党保守連合アライアンス予算案が国会を通り、政府はそれに従った。

スウェーデンでは2018年9月9日の総選挙(2018年9月11日記事参照)以降、首相が決まらない状態が続いており、再選挙のリスクも去っていない。2019年1月には、アンドレアス・ノレーン国会議長が最後の試みとして首相候補を選定し、国会で信任投票が行われる。現状では、首相候補が信任されるか、あるいは再選挙になるかは不透明だ。

(注)地域に根差し、廉価に気軽に受診ができる住民のための医療。

(三瓶恵子)

(スウェーデン)

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