アイルランドでもノー・ディールに備え、緊急対策計画を発表

(アイルランド、英国)

ロンドン発

2018年12月25日

アイルランド政府は12月19日、英国のEU離脱(ブレグジット)が合意なしに行われる「ノー・ディール」に備えるための緊急対策計画であるコンティンジェンシー・アクションプランPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。貿易・経済への影響の最小化、北アイルランドとの国境のハードボーダーの回避を含めた和平手続きの保護、共通旅行区域(CTA)の維持、EUとの関係強化が柱となっている。

今回発表されたプランでは、ブレグジットによってアイルランドに生じる影響を経済・財政面、安全保障、北アイルランドとの南北関係、英国との関係からの分析に加え、貿易や航空、観光をはじめとする分野別にも分析し、今後の対応の方向性について触れている。

例えば、貿易の要衝となるダブリン港やロスレア港では、荷物検査所の増設、トラック用の駐車スペースの増設などインフラを拡充する。ダブリン空港では既にインフラ拡充が始まっている。税関スタッフも200人を新規に雇用し、流通への影響を軽減する。英国を経由してEUに輸送されるアイルランド製品にとっては、ノー・ディールの場合にドーバー海峡の流通の大きな遅延がボトルネックになり得るため、海運業者と連携して新たな流通経路の開拓を進める。さらに、税関はブレグジットへの準備を進める企業を支援するためのウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを開設するほか、貿易企業への支援プログラムを策定している。

また、ノー・ディールの場合に改正が必要とされる45の法制度の改正案の作成の準備を急ぐ。CTAについては、英国・アイルランドは維持する方向で一致しているため、今後、必要な制度構築のため協力していくとする。

分析と対応の方向性を示したものの、具体策に落とし込んだ部分が少ないため、サイモン・コーブニー副首相兼外務・貿易相は、このプランは硬直的だが包括的であるとも評し、より具体的な施策の実行を進める構えだ。

(木下裕之)

(アイルランド、英国)

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