EUとの制度的条約の交渉状況を発表

(スイス、EU)

ジュネーブ発

2018年12月21日

スイス連邦政府は12月7日、EUとの間の制度的条約(Institutional Agreement、制度的枠組み合意とも言う)締結交渉の状況について発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、条約案を初めて対外公開PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)するとともに(注1)、国内関係機関に対して政策の是非を問う公開コンサルテーションのプロセスに入る。

この条約は、EU法令の改正が事実上自動的にスイス国内にも適用されるようにするための制度見直しや、スイス・EU間の紛争処理手続きを定めるもので、2014年から交渉が続いている。この背景には、スイスは製品の基準、農産品の取り扱いや輸送規制など120以上の分野でEUと協定を締結し、EU域内と同等の待遇を確保してきたのに、現状ではEU側の法令改正、例えばEUが重要視するヒトの自由な移動などが必ずしもスイスとの各協定に迅速に反映されないというEU側の不満がある。

EUは制度的条約締結をスイスに強く求めている。最近では、スイス証券取引所におけるEU企業の株式取引の承認権(注2)がEU側にあり、その期限が2018年末で切れることから、EUは同条約の合意を材料に両者間で承認権延期の交渉が進められていた。制度的条約案に関する公開コンサルテーションは、スイス連邦議会、各州、関係機関に対して行われ、2019年春までかかると見込まれている。EU側もスイスの民主的プロセスへの介入とならないよう、EU企業株式の取引承認に関する判断を半年程度延期する方向にあると報道されている。

(注1)2018年10月に、スイス連邦外務省は制度的条約に関する交渉の進捗状況を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。スイス側の見解として、EUの法令改正がスイスとの2国間協定に迅速に反映されることは重要としつつも、スイス側でも国民投票など所要の法的手続きを取ることが前提だと記されている。

(注2)EU当局による域外証券取引市場でのEU市場との同等性の承認。これがない場合、EU企業は域外で株式取引が実質的にできなくなる。

(和田恭)

(スイス、EU)

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