米農畜産・食品業界、TPP11による対日輸出の競争力悪化を懸念

(米国)

ニューヨーク発

2018年12月26日

環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)が12月30日に発効することを控え、米国の農畜産や食品業界からは、日本市場における競争環境の悪化を懸念する声が聞かれる。

米通商代表部(USTR)が12月10日に開いた対日通商交渉に関する公聴会では、米国食肉輸出連合会(USMEF)や米国小麦連合会(USW)、食品製造業者協会(GMA)、全米生乳生産者連盟(NMPF)、ウェルチなどが、TPP11加盟国に対する日本の関税が引き下げられ、相対的に米国の対日輸出が不利になるとの危機感を示した(2018年12月12日記事参照)。その上でこれら団体は、日本との2国間協定の締結を通じて、米国輸出の競争条件を改善するよう求めている。ネブラスカ州農業連合会(NEFB)のスティーブ・ネルソン代表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますも12月6日、「TPPからの離脱を決めた際に、トランプ大統領は(TPPの代わりに)EUや日本と2国間協定を結ぶと約束した。ネブラスカの農家や酪農家に明るい未来や機会を保証するために、この約束は守られなければならない」と政権に2国間通商協議の進展を促している。

米農務省(USDA)は12月14日、TPP11が日本の牛肉市場に及ぼす変化に関するレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同レポートは、TPP11の発効により、(1)TPP11加盟国のオーストラリア、カナダ、ニュージーランドからの輸入牛肉に対する日本の関税が引き下げられること(注)、(2)TPP11加盟国には同協定の牛肉セーフガードが適用されようになる一方、米国には貿易協定を結んでいない国に対する緊急措置が引き続き適用されることなどを指摘し、米国の対日輸出が不利な立場に置かれることを示唆している。

(注)オーストラリアと日本の間では、日豪経済連携協定(EPA)が2015年1月に発効しており、既に同国の牛肉輸出に対する関税は段階的に引き下げられている。

(鈴木敦)

(米国)

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