中銀の介入や原油輸出見通し改善で通貨高傾向

(イラン)

テヘラン発

2018年12月20日

12月に入り、イランの外国為替相場(市場レート)で、外貨に対する現地通貨(イラン・リアル)高の傾向が続いている。9月27日の最安値では1ドル=約18万7,000リアルだったが、日曜日(注)の12月16日には1ドル=約9万8,500リアルとなり、リアルの価値が倍増した状況だ。

報道では、リアル高の主な要因として、イラン中央銀行による介入などが挙げられている。加えて、イラン産原油の輸出見通しが当初よりも改善したため、心理的な側面も含めて国内経済・為替相場が落ち着いたと思われる。米国による対イラン制裁により、特に11月5日以降は金融や原油関連取引の大幅な制限が懸念され、急激なリアル安傾向が続いていたが、日本を含めた8カ国へのイラン産原油輸出について、米政府が180日間の期限付きながら容認したことが、イランの経済・為替相場に安心感を与えたもようだ。

同時に、イラン国内の金相場も下落傾向だ。9月27日には金貨1枚(金8.133グラム相当)=約5,251万リアルだったが、12月16日には金貨1枚=約3,200万リアルとなり、最高値と比較すると約4割下落した。大幅なリアル安が続く中で一時は外貨購入ができず、金相場も大幅な上昇が続いていたが、リアル高とともに下落した格好だ。

為替相場・金相場が落ち着きを取り戻しつつあるものの、短期間での相場の乱高下はイラン経済全体にとっては不安定要因だ。また、原油輸出は一時的に継続できる見込みだが、制裁が解除されたわけではなく、ジリ貧の状況が続いていることに変わりはない。物価の上昇傾向も続く中で、年末からはイラン暦での来年度予算案が国会で審議される予定だ。加えて、EUが現在進めている特別目的事業体(SPV)の進捗など、国内外の情勢にも注視が引き続き必要だ。

(注)イランでは、日曜日は営業日。

(中村志信)

(イラン)

ビジネス短信 8cec6428b83ef861