知的財産権侵害への懲戒を強化、米国との協議も背景に

(中国、米国)

北京発

2018年12月12日

国家発展改革委員会など38部門は連名で12月4日、「知的財産権(専利)分野における深刻な信用失墜主体に対する共同懲戒の実施に関する覚書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。各部門は実施に向けた細則や実施手順を制定し、2018年12月末までに「共同懲戒」を実現する。

「知的財産権(専利)分野における深刻な信用失墜行為」は、次の6つとした。(1)専利権侵害の繰り返し行為、(2)法による執行の拒否行為、(3)専利代理人の深刻な違法行為、(4)専利代理人の資格証書の借用行為、(5)異常専利出願行為、(6)虚偽文書の提供行為。

国家知識産権局は、全国信用情報共有プラットフォームを通じて、この覚書を締結したその他の部門・単位に「信用失墜主体名簿」を提供し、かつ「信用中国」ウェブサイト、国家企業信用情報公示システム、国家知識産権局政府ウェブサイトなどでその名簿を公表する。その他の部門は覚書の規定により、それらの主体に対して共同で懲戒措置を実施するとした。

懲戒措置は、深刻な信用失墜主体に対する政府の資金支援の制限、政府が供給する土地の取得制限、輸出入貨物などに対する厳密な監督管理や監視・検査の強化、飛行機や列車の利用制限など、33項目にわたる幅広い内容となった。詳細は覚書の添付文書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を参照。

中国政府は3月の全国人民代表大会での政府活動報告で、知的財産権の保護を強化すると表明しており、その後、習近平国家主席のボアオフォーラムでの演説などでも繰り返し知的財産権保護強化の方針を強調している。同覚書はその一環の措置との見方もある。

一方で、米国トランプ政権も中国の知的財産権侵害について繰り返し問題提起しており、今回の覚書が12月1日に行われた米中首脳会談の直後に発表されたことから、米国との協議を意識した措置との観測も強い。

首脳会談で交渉開始が合意された5分野の構造改革のうち、知的財産権保護も対象となっており、中国は90日間で対策を示し米国との合意を目指すとみられる。中国国内では覚書について、「中国が知的財産権の保護と法執行をより強化するという立場が表れている」(北京大学法学院の張平教授)、「処罰措置が全面的で強力である」(浙江大学光華法学院の李永明教授)といった評価の声が上がるものの、米国の改善要求を満たすものかは不透明だ(「澎湃新聞」12月5日)。

なお、外交部の耿爽報道官は12月5日の定例記者会見で、米国との知的財産分野の討議について、「継続して行っており、中断したことはない。関連する問題について、これからの協議において米国と共同で妥当な解決方法を検討する」と述べ、協議を続ける姿勢を見せた。

(藤原智生)

(中国、米国)

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