EU首脳会議、ブレグジット合意の再交渉に応じぬ方針を確認

(EU、英国、ロシア)

ブリュッセル発

2018年12月17日

欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長は12月14日、前日にブリュッセルで始まった欧州理事会(EU首脳会議)の協議結果を総括し、優先課題の1つである英国のEU離脱(ブレグジット)について、「11月25日の合意(2018年11月26日記事参照)に再交渉の余地はない」とあらためて明言した。

ブレグジット合意に基づく離脱を迫るEU

トゥスク常任議長によれば、英国のテレーザ・メイ首相はEU首脳に、ブレグジット合意に関する英国議会での承認プロセスが難航している現状を報告、事態打開のための対応策を求めてきた、という。

しかし、これに対する欧州理事会としての結論は「離脱協定案と政治宣言案を承認した11月25日の臨時欧州理事会の決定を再確認する」というものだった。EU側としては「(合意した)離脱協定に署名すれば、ブレグジット後に可及的速やかに、EU・英国の将来関係に関する交渉を開始するための準備に着手する」としており、11月25日のブレグジット合意に基づく離脱を前提とする基本方針があらためて確認された。

また、欧州理事会は「北アイルランド国境問題をめぐる安全策(バックストップ)は、厳格な国境管理を復活させないための保険的方策で、このバックストップを発動させないために、2020年12月31日までに(EU・英国の通商協定など)後継協定の妥結を迅速に行う」方針を固めたことも明らかにし、メイ首相の置かれた厳しい状況に理解を示した。さらに、「仮にバックストップが発動された場合でも、それは後継協定が発効するまでの暫定的な措置」である点も強調している。

そのほか、今回の欧州理事会では「アゾフ海(ケルチ海峡)での最近のロシアの軍事行動に正当性はない」との認識が示され、「ミンスク合意の履行状況にも進展がないことから、ロシアに対する経済制裁(2018年7月6日記事参照)を延長する方針を固めた」とした。また、2021~2027年の中期予算枠組み(MFF)やEU単一市場の在り方、移民問題、気候変動問題(COP24)などについて協議した。会議初日の12月13日には、12日に欧州議会本会議で日EU経済連携協定(EPA)締結の勧告案が採択されたことを歓迎する見解も明らかにしている(2018年12月14日記事参照)。

(前田篤穂)

(EU、英国、ロシア)

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