英国議会の離脱協定案否決に危機感を示す欧州産業界

(EU、英国)

ブリュッセル発

2019年01月17日

欧州の主要産業団体は1月16日、英国議会がEUとの「離脱協定」案および「政治宣言」案を否決したことについて、相次ぎ危機感を表明した。

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は1月16日、「合意なき離脱(ノー・ディール)回避に向けた解決策を直ちに見いだすべき」と題する声明を出し、前日の英国議会の採決結果(2019年1月16日記事参照)について「欧州産業界は著しく困惑している」と不快感を鮮明にした。ビジネスヨーロッパは、従来のEU側の主張を繰り返し、「(ブレグジットに伴う激変を緩和する)移行期間を含む離脱協定こそ、市民生活や企業活動への深刻な断絶を回避する唯一の選択肢」「この枠組みの中で、市民や企業は英国の離脱および将来の(EUとの)関係に向けた準備を適切に進められる」と指摘。マルクス・バイラー事務総長は「欧州産業界として、ノー・ディールは全く受け入れられない話だ。無秩序と混乱を招くもので、絶対に避けなければならない」とコメントした。ビジネスヨーロッパは「英国は信頼できる対応策を提示すべき」としつつ、同時に「ノー・ディールのための準備を急がねばならない」と警鐘も鳴らしている。

欧州中小企業連合会(SMEunited)も1月16日、「ノー・ディールは中小企業にとって大惨事(disaster)をもたらす」と明言。欧州の中小企業は連携してノー・ディールのシナリオを想定した準備を急ぐべき、と危機感を募らせている。

また同日、欧州化学工業連盟 (Cefic)は「英国議会の否決により、企業にとって不透明感が引き続き続く。企業は(欧州での)生産・投資・雇用について判断ができない」と厳しい状況認識を示した。同連盟は、今後も英国化学工業協会(CIA)や在英国化学企業と連携して、欧州化学産業界の立場を政策決定者に伝える取り組みを続けるとしている。

一方、欧州労働組合連合(ETUC)は1月15日付の声明で、「われわれは離脱の延期もしくは撤回を求める。英国の合意なき離脱やアイルランド・北アイルランド間の国境管理復活を回避するためには、そうするほかにない。もう残された時間はなく、EUや英国の雇用や(労働者の)権利は脅かされつつある。全ての関係者が現実的な解決策を模索すべきだ」と訴えている。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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