2019年税制改正案が国会を通過

(マレーシア)

クアラルンプール発

2019年01月17日

マレーシアの2019年税制改正案が2018年12月10日に国会を通過した。日系企業に影響があるとみられる主な変更点として、(1)欠損金や未使用控除の繰り越し期間の見直し、(2)2018年9月1日に導入されたサービス税の適用範囲の変更、などが挙げられる。

欠損金や未使用控除の繰り越しに制限

変更前は無期限に繰り越しが可能だった繰越欠損金(翌事業年度以降の黒字から控除できる税務上の赤字額)、パイオニア・ステータス(注)期間内に発生する未控除の資本控除と累積損失、設備近代化や自動化などを行った企業に対する再投資控除(RA)における控除の未使用分、サービス分野の投資控除における控除の未使用分の繰り越し期間が、2019年課税年度から連続する7課税年度に制限される。2018課税年度までの発生分については、2025課税年度まで繰り越しが可能だ。

製造業に従事する日系企業には、上記の控除を活用している企業も多く、事業活動に影響が出る恐れがある。当初案では、未控除の税務上の減価償却費および新規投資額の一定割合を税額控除として認める投資税額控除(ITA)についても繰り越し制限の対象だったが、これらは従前どおり無期限の繰り越しが可能となった。

輸入サービスも課税対象に

現行では国内事業者が提供する特定のサービスに対してサービス税が課せられるが、変更後は国外事業者が国内事業者や消費者に提供するサービス(輸入サービス)にも課せられる。本変更は2段階で導入される。第1段階は2019年1月1日からBtoBサービスが対象となった。第2段階は2020年1月1日から、音楽や動画配信を含むオンライン、デジタルサービスなどのBtoCサービスが対象となる。前者はサービスを利用した国内事業者が申告、納税を行う一方、後者は国外事業者がマレーシアで登録を行い、サービス税を徴収される。前者の場合はサービス税に加え、非居住者へのサービス対価の支払いに対して課される源泉税も対象となり得るため、今後の動きに注視が必要だ。

なお、サービス税はBtoB取引を対象にした免税制度がないため、重複して課税が行われてしまう場合がある。例えば、プロジェクトの元請け会社が、一部業務を他の会社に下請けに出す場合などが想定される。これを避けるため、同種の課税サービスの登録事業者間で提供されるサービスが免税となるが、同種のサービスであると判断される基準は現時点で明らかになっていない。詳細は今後、サービス税法の改正により規定される見込みだ。

(注)パイオニア・ステータスは、法で定められた一定条件を満たした企業に対して、直接税・間接税の一部、または全部の免除を認める税制優遇措置の1つ。

(田中麻理)

(マレーシア)

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