メイ首相、政府不信任動議を退け超党派の協議開始

(英国、EU)

ロンドン発

2019年01月17日

英国議会で1月16日夜、テレーザ・メイ首相率いる英国政府に対する不信任動議の投票が行われ、賛成(不信任)306票、反対(信任)325票で否決された。大方の予想どおりの結果になった。英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐるEUとの合意案が前日15日に英国議会で否決されたことを受け、最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首が政府不信任動議を提出していた(2019年1月16日記事参照)。

メイ首相は投票後の議会での声明で、各党首脳と「今夜にも」個別に協議を始めることを提案。約3時間後の午後10時過ぎには官邸で会見し、自由民主党のビンス・ケーブル党首と、スコットランド国民党(SNP)、ウェールズの地域政党プライド・カムリの両議員団代表と協議したことを明らかにした。その上で首相は、与党・保守党に閣外協力するもののブレグジット合意に反発する民主統一党(DUP)を含め、できる限り多様な見解を代弁する議員と協議を重ねると述べている。

一方、労働党のコービン党首はメイ首相との協議の前提として、合意なき離脱(ノー・ディール)の可能性を排除するよう主張。協議に応じたSNP、自由民主党なども、ノー・ディールの排除と、離脱日の延期や2度目の国民投票実施も選択肢とするよう主張している。フィリップ・ハモンド財務相ら政権中枢の閣僚にも、ノー・ディール回避を求める声があり、メイ首相は何らかの妥協を迫られる可能性もある。

コービン党首も立場が厳しくなりつつある。労働党が最大の目標にしていた議会解散・総選挙の実現は今回の政府不信任動議否決により遠のいたため、党が目指す選択肢に残していた2度目の国民投票の実現を目指す姿勢を明確にすることを求める圧力が党内外で強まっている。離脱に賛成する労働党支持者の離反などを懸念して、この選択肢は終始曖昧にされてきたものだが、SNP、自由民主党、プライド・カムリ、緑の党の代表は16日夜、コービン党首に宛てた連名の書簡で、再度の国民投票を支持するよう要求している。

しかし、国民投票はEU残留に転じる道を開くことにもなりかねないため、EU離脱派の閣僚らが次々と退陣して政権が立ち行かなくなる可能性も生じる。その一方で、EUと合意した離脱協定案そのものの変更を主張するDUPや与党内EU離脱強硬派と、EUの双方が受け入れ可能な現実的な対案を編み出すことも、極めて困難だ。

メイ首相は一連の協議を経て1月21日に政府の方針を示し、EUとの協議に望みをつなぐ。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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