TPP11に加入すべきか否か、韓国政府のジレンマ

(韓国)

中国北アジア課

2019年01月11日

環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)加入に関する、韓国政府の態度表明が遅れている(2018年12月26日記事参照)。加入促進論の半面で慎重論も根強く、韓国政府は容易に意思決定できないジレンマに陥っている。

加入のメリットとしては、(1)TPP11のうち、自由貿易協定(FTA)未締結の日本、メキシコ向け輸出拡大や、(2)TPP11加入による既存FTAのグレードアップ、が期待できることが挙げられる。さらに、(3)TPP11が21世紀型の新たなルールを構築している点も重要だ。「聯合ニュース」(2018年12月30日)は、「(韓国が加入しない場合)今後、TPP11を中心に新しい分野のデジタル貿易などの国際ルールの議論が進むと、韓国が議論から除外される危険がある」と警鐘を鳴らしている。

世論の動向がポイントに

輸出立国の韓国としてはTPP加入が必須のようでもあるが、一方で慎重論も根強い。特に、(1)対日輸入増加による国内製造業への影響、(2)農産品市場の追加開放による国内農業への影響、が危惧されている。前者について、「韓国経済新聞」(電子版2018年12月30日)は「日本は相当数の工業製品の関税が既に無税で、TPP11に加入すると、韓国が一方的に市場開放することになる。特に、自動車産業では、現在8%の完成車の関税を引き下げると、日本車による国内市場浸食が進展し得る」と報じている。しかし、韓国の製造業の競争力が大幅に向上した現在、日本製品の流入をそこまで警戒する必要があるのだろうか。2018年12月下旬に韓国の複数の通商専門家に聞いたところ、「実際にそれほど流入するとは思わない。しかし、ポイントは実際どうなるかよりも、世論の動向だ」「文政権は、朴前大統領を弾劾に追い詰めた『ろうそくデモ』で生まれただけに、世論に敏感にならざるを得ない」「日本から各種部品が流入し、弱者である中小企業を圧迫しかねない、と世論が反発する恐れがある」「現在、韓国の自動車産業は苦境にあるため、TPP11加入のタイミングとしては難しい」などといった指摘が聞かれた。

(百本和弘)

(韓国)

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