国境の壁建設をめぐる対立は解消せず、政府機関の閉鎖続く

(米国)

ニューヨーク発

2019年01月04日

2018年12月22日から始まった米国政府機関の一部閉鎖が、2019年1月3日で13日目に入った。同日に、2018年11月の中間選挙で過半数を制して多数党を奪還した民主党主導の下院議会がスタートし、下院議長には、ナンシー・ペロシ議員(カリフォルニア州)が就任した。下院では同日夜、民主党のイニシアチブで政府機関閉鎖を解消するため、未成立の7つの歳出法案のうち、国土安全保障省関連を除く6つの法案を1つの法案パッケージで2019年度通年の予算とし、争点となっている国境の壁建設を含む国土安全保障省関連の予算は2月8日までの暫定予算としてそれぞれ採決し、賛成多数で可決した。しかし、上院多数党院内総務のミッチ・マコーネル議員(共和党、ケンタッキー州)は「トランプ大統領が署名しない法案は、上院では採決しない」と発言しており、現時点で同法案が成立し、政府機関閉鎖が解消されるめどは立っていない。

政府の予算執行を可能とするためには、主に省庁別に区分された合計12本の歳出法案を成立させる必要がある。しかし、2019会計年度が始まった2018年10月1日までに成立したのは、このうち、国防、エネルギー、労働・福祉・教育、立法府、退役軍人の5本のみで、残りの農務、商務・司法・科学、国土安全保障、国務・外交、運輸・住宅都市開発など7つの歳出法案は2018年12月22日までの暫定予算(ただし、12月7日に1回延長)によって、執行されてきた。

トランプ大統領は、大統領選挙での選挙公約であるメキシコ国境の「壁」の建設費50億ドルを予算に含めることを要求しているのに対し、民主党が反対して折り合いがつかず、2018年12月22日から一部の政府機関で予算を支出できなくなった。民主党も国境警備の強化の必要性は認めているものの、物理的な壁の建設は効果がないとして、反対している。

現在、予算が執行できないのは、農務省、商務省、司法省、財務省、内務省、国務省、運輸省、国家安全保障省、住宅都市開発省、環境保護庁などの機関だ。空港、港湾などの公共サービスについては職員が一時的に無給の状態で対応しているため、市民生活に大きな混乱は起きていない。しかし商務省管轄では、経済分析局(BEA)の業務停止により経済統計の発表が当面行われないほか、国際貿易局(ITA)が行うアンチダンピングなど不公正貿易の審査や、産業安全保障局(BIS)が担当している、1962年通商拡大法232条による鉄鋼とアルミニウム製品への追加関税賦課に関する適用除外申請の審査なども、政府機関閉鎖が解除されるまで停止される見込みだ。また、ワシントンのスミソニアン博物館や一部の国立公園などの観光施設が閉鎖されるなどの影響も出ている。

(若松勇)

(米国)

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