都市ごみ処理制度のための統一組織を設立へ

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2019年01月18日

プーチン大統領は1月14日、一般廃棄物(都市ごみ)取り扱い分野の各種調整や、ごみ処理インフラの投資促進などを担う統一的な組織の新設に関する大統領令に署名した。

同日付で発効した大統領令は「一般廃棄物処理の複合制度組成のための公共法人『ロシア環境事業者』の設立について」。大統領令ではその目的を、(1)関連法規の実施保証、(2)投資活動の促進、(3)国家事業「環境(エコロジー)」(注)の実現と説明している。「ロシア環境事業者」は天然資源・環境省が2019年末までにモスクワ市に設立する予定で、社内の監視評議会には、第1副首相、天然資源・環境相、建設・住宅公共サービス相、産業商務相といった閣僚が名を連ねる。

「ロシア環境事業者」の役割は、廃棄物処理に関し、(1)連邦・構成主体・地方自治体の各機関との調整、(2)投資事業への民間投資誘致政策の作成、(3)2次資源化の促進・補助、(4)前述機関ならびに各事業者との連携などとされている。具体的な例として、(1)では国家計画・事業の作成・実施への参加などが挙げられ、(2)では投資事業に関し、国家補助プログラムの連邦・地域事業の作成、融資、債券発行による資金調達のほか、施設建設用地の買い付けや資本参加なども認められている。ごみ処理インフラの建設事業に対する公的資金の支出はこの「ロシア環境事業者」を経由することになり、デニス・フラモフ天然資源・環境第1次官は同法人には約750億ルーブル(約1,200億円、1ルーブル=約1.6円)が連邦予算から充当されると明かしていた(「RBK」2018年12月5日)。

ロシアでは2019年1月から一部の猶予措置を除き、新たな都市ごみ処理制度の適用が始まっている。通称「ごみ改革」と言われるこの新制度では、各地域で任命された地域事業者がごみの回収から廃物利用(リサイクル)、隔離保存などといった全ての処理工程を実施することになっているが、全面実施が過去2回延期されている。改革を主管する天然資源・環境省は、各地の地域事業者を束ねる統一的な運営・調整機関が必要だとして、今回の大統領令案の作成に当たっていた。

一方で、業界では冷ややかな反応も見られる。経済発展省の情報筋は「(制度上の)問題が発生すると、新しい組織を作って解決を図るのが常とう手段になっている」と指摘し、「(今回の)準調整機関で全ての調和が取れるとは思えない」と否定的だ。有力経営者団体・ロシア産業企業家同盟の関係者も「ごみ改革は、市場形成や民間セクター発展ではなく、国営独占企業の設立を想定したものであり、最終的にはこの企業に全ての収益が集まることになる」と批判している(「コメルサント」紙1月15日)。

(注)プーチン大統領が2018年5月に掲げた2024年までの内政目標に従い、天然資源・環境省が同年9月に発表した国家事業。11の連邦事業で構成され、そのうちの1つに「一般廃棄物処理の複合制度」がある。

(市谷恵子)

(ロシア)

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