ノー・ディールの影響をアイルランド政府が発表

(アイルランド、英国)

ロンドン発

2019年02月01日

アイルランド政府は1月29日、英国が合意のないノー・ディールでEUから離脱(ブレグジット)した場合の、アイルランドへの影響の分析結果を発表した。

経済への中期的な影響については、2018年10月に発表した2019年予算案に際しての経済予測と比較して、2023年までのGDP成長率が4.25ポイント低下する、と試算した。短期的には、2019年のGDP成長率は前述の予測値から2.7ポイント減となる1.5%、2020年は0.85ポイント減の2.75%と予想する。パスカル・ドノフー財務相はこの分析について、ブレグジットにはいまだ多くの不確実性が存在する中で、もしノー・ディールになれば、厳しい影響を与えるとし、特に農業のような労働集約的産業と地場の中小・中堅企業に関して、より大きな影響があるとの見方を示した。

労働市場への影響については、2023年までに17万8,000人の雇用が創出されると試算しており、この数値は2018年10月の予算案時の予測よりも5万5,000人少ない。また、失業率は2ポイント悪化すると試算した。財政収支は2019年がGDP比0%からマイナス2%へ、2020年は0.3%からマイナス0.5%にそれぞれ悪化し、2023年にかけてさらに悪化すると見通した。

1月29日付の「アイリッシュ・タイムズ」紙は、マイケル・クリード農業相が同日、内閣に対して、英国との貿易にWTOルールが適用された場合、アイルランド農産品輸出に17億ユーロの追加コスト負担が生じるとの試算を提出したと報じている。ドノフー財務相は同紙で、分析結果は景気後退を示すものではなく、予算案で示した各種政策を変更するつもりはないと強調した。ただし、ノー・ディールが多大な影響を及ぼすため、次回以降の予算編成で政策変更の可能性があるとした。政府はノー・ディールへの対策の一環として、緊急対策計画(2018年12月25日記事参照)や複数産業分野をカバーした法案(2019年1月29日記事参照)を既に発表している。

(木下裕之)

(アイルランド、英国)

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