ロシア広軌鉄道のオーストリアへの延長覚書に調印

(オーストリア、スロバキア、ロシア)

ウィーン発

2019年03月26日

オーストリアのアンドレアス・ライハルト交通・イノベーション・技術副大臣、スロバキアのラディスラバ・ツェンゲロバ交通・建設副大臣およびロシアのウラジミール・トカレフ運輸副大臣は3月18日、ロシアの広軌鉄道のウィーン・ブラチスラバ地域(ウィーンとスロバキアの首都・ブラチスラバは直線距離で約55キロと近いため「ツイン・シティー地域」と呼ばれる)への延長に関する覚書に調印した。

オーストリア連邦産業院(日本の商工会議所に相当)や国鉄など、オーストリアの経済界は数年来、ロシアの広軌鉄道(1,520ミリ)のオーストリアまでの延長を強く要請してきた。なお、オーストリアは対中国貿易では赤字だが、ここ10年で中国向け輸出が倍増していることも今回の鉄道計画を後押ししている。今回の覚書により、オーストリアからロシアを経由してアジアまでを、環境負荷が低い物流手段の鉄道でつなぐ事業の大枠が定められた。3カ国はプロジェクトの全面的な支援を約束し、今後、ワーキンググループが条約締結に向けて集中的に作業を進める。オーストリア、スロバキア、ロシア、ウクライナの各国鉄のジョイントベンチャー「広軌鉄道計画会社」がプロジェクトを担当する。融資など資金計画については、現時点では未定。2018年9月にウィーン市内で開催された関連セミナーでも、採算性について疑問視する声が民間企業から上がったが、オーストリアがアジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設メンバー国でもあり、資金調達について肯定的な見解も多く聞かれた。

オーストリア産業界は、今回のプロジェクトによる鉄道インフラの改善により、東アジア~欧州間の輸送時間の大幅な短縮を期待している。ウクライナに接するスロバキア東部のコシツェからウィーンまでの広軌鉄道の延長について、オーストリア国鉄インフラ部門は既にFS(事業化調査)を完了し、2018年11月にオーストリアでの許認可取得手続きを開始している。広軌鉄道の延長は、2033年までの完成を予想している。

覚書の調印に際して、ライハルト副大臣は「プロジェクトは、オーストリアにもスロバキアにも裨益(ひえき)する。ツイン・シティー地域は欧州最大の物流拠点の1つになるとともに、300億ユーロの付加価値、2万人の雇用が創出される」と述べた。

(エッカート・デアシュミット)

(オーストリア、スロバキア、ロシア)

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