アゼルバイジャン鉄道、BTK積み替えターミナルを年内完工

(アゼルバイジャン、ジョージア、トルコ)

欧州ロシアCIS課

2019年03月01日

ジョージア・トルコ国境で東西の物流をつなぐ貨物・旅客ターミナルの建設が進んでいる。事業を主導するアゼルバイジャン鉄道ジョージア支店(注1)のアダラト・ワヒロフ支店長はジェトロのインタビューに対し、建設工事は順調に進んでおり、2019年末に予定どおり完工するとの見通しを述べた(2月25日)。

中国と欧州をつなぐ鉄道網の1つで、カスピ海西岸のアゼルバイジャンの首都バクーと、ジョージアを経由しトルコ・カルスをつなぐBTK(バクー・トビリシ・カルス)鉄道。2017年10月から運行がスタートし(2017年11月10日記事参照)、実績を少しずつ積み上げている。

旧ソ連地域のアゼルバイジャン・ジョージアとトルコでは軌間幅が異なるため、トルコ国境に近いジョージア・アハルカラキにあるターミナルでは、貨物の積み替え・台車の交換作業が行われている。2019年第3四半期(7~9月)に旅客輸送の開始が予定されており、年間の目標輸送旅客は100万人とされている。2018年12月にはフランスの重電大手アルストムからBTK鉄道向け機関車の納入も開始され、2021年までに貨物輸送用が40台、乗客輸送用が10台、順次導入される(注2)。

BTK鉄道建設事業は、コーカサスの輸送ハブ化を目指すアゼルバイジャン政府が積極的に推進しており、貨物・旅客ターミナルの建設・整備も、同政府からの融資によって実施している。この事業を実施・監理するアゼルバイジャン鉄道のワヒロフ・ジョージア支店長(アゼルバイジャン鉄道ジョージア代表)のコメントは次のとおり。

(問)アハルカラキのターミナル建設事業の概要と進捗状況について。

(答)ターミナル総面積9万6,000平方メートル、総事業費7億2,000万ドル。原資はアゼルバイジャン政府によるジョージア政府への融資。入札の結果、工事はアゼルバイジャン鉄道のJV(合同企業体)が受注している。2017年10月時点で貨物の積み替え機能は稼働しており、現在は効率的な積み替え業務や税関のための建屋を建設中だ。鉄道・自動車用計測施設や乗客輸送用駅舎などは完成している。雪解けを待って必要個所を舗装し、2019年末までに全ての工事が完了する。

写真 完成した国境駅舎。乗客輸送開始時期に合わせ資機材が導入される(ジェトロ撮影)

完成した国境駅舎。乗客輸送開始時期に合わせ資機材が導入される(ジェトロ撮影)

写真 台車交換装置。屋内作業とするため建屋を急ピッチで建設中(ジェトロ撮影)

台車交換装置。屋内作業とするため建屋を急ピッチで建設中(ジェトロ撮影)

(問)現在のターミナルの稼働率、取り扱い貨物の種類などオペレーションは。

(答)現在の稼働率は約10~15%で、1日当たりの取り扱い貨物列車本数は双方向で2~3本程度。ターミナルは24時間稼働。全ての種類の貨物を取り扱う。穀物、石炭、鉄鋼製品、ドライコンテナなど。原油など液体貨物と完成車はまだ実績はないが、輸送自体は可能。第1段階で目標とする年間取扱量は500万トン。実際の積み替え作業はジョージア鉄道のスタッフが行い、優秀だ。貨物は中国、カザフスタン、ロシアなどさまざまな国から送られてくる。トルコからはリーファーコンテナも運ばれてくる。貨物の増減の見通しは担当外だが、BTKの認知が進み、ロシア・中央アジアからトルコ経由欧州・アフリカ向け貨物、トルコからロシア向け食品、日用品、自動車部品などの輸送需要が増えれば、ターミナル機能拡張の余地は十分にある。除雪機関車も広軌(1,520ミリ)と狭軌(1,435ミリ)で2台導入しており、積雪など天候を理由とする遅れはない。

写真 カザフスタンからのコンテナ貨物。手前はワヒロフ支店長(ジェトロ撮影)

カザフスタンからのコンテナ貨物。手前はワヒロフ支店長(ジェトロ撮影)

写真 外構工事は春以降に実施の予定(ジェトロ撮影)

外構工事は春以降に実施の予定(ジェトロ撮影)

(注1)アゼルバイジャン鉄道は、CIS・欧州地域を中心に駐在員事務所を置いているが、ジョージアでは貨物・旅客ターミナル建設事業を担うため、国外で唯一の支店を設置している。アゼルバイジャン政府が融資する国外の鉄道建設事業には、この事業のほかに、ロシア・アゼルバイジャンとイランをつなぐ「南北」輸送路の(イラン側)アスタラ・ラシュト間の鉄道敷設事業がある(2018年2月1日記事参照)が、工事はイラン企業が担当しているため支店は開設されていない。

(注2)客車はスイスのシュタッドラー・レールと供給契約を締結している。

(高橋淳)

(アゼルバイジャン、ジョージア、トルコ)

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