FRBが金融政策の現状維持を決定、年内の追加利上げは見送り

(米国)

ニューヨーク発

2019年03月25日

米国連邦準備制度理事会(FRB)は3月19~20日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、金融政策の現状維持を決定した。フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標は、2.25~2.50%に据え置かれた。今回の決定は全会一致だった。

米国経済の現状判断を下方修正

FOMCの声明によると、米国経済全般の判断について、「労働市場は依然として力強い」が、経済活動の拡大は「(2018年)第4四半期の底堅いペースから減速した」とし、前回の「底堅いペースで拡大を続けた」から下方修正した。パウエルFRB議長は「成長は予想よりもいくぶん減速」していると述べた。一方で、先行きに関する記述は1月会合から変更せず(2019年2月1日記事参照)、パウエル議長は今のところ利上げ・利下げのいずれかの方向に動くべきことを示唆するようなデータはみられず、FOMCは「引き続き忍耐強く(remain patient)あるべき」と述べた。

2019年内の追加利上げは見送られるとの想定

FOMCメンバーによるFFレートの見通し(17人の委員メンバーの中央値)は、2019年、2020年、2021年、長期がそれぞれ2.375%、2.625%、2.625%、2.750%と、長期(据え置き)を除き、いずれも2018年12月会合時点から0.50ポイントずつ引き下げられた(図参照)。1回当たりの利上げ幅を0.25ポイントとして、2019年の利上げ回数見通しは2回から0回へ引き下げられた。2019年内の追加利上げは行われない想定となっている。一方で、2020年は1回、2021年は0回と前回から維持された。

図 FOMCメンバーが予想する将来のFF金利水準

FRB保有資産規模の縮小を9月末に終了

また今回は、「バランスシート正常化の原則と計画」を改定し、2017年10月から開始されたFRB保有資産規模の縮小(2017年9月26日記事参照)について、2019年5月から縮小ペースを減速させ、同年9月末に縮小を終了することなどが発表された。パウエル議長は「今後6カ月間でFRBのバランスシート規模を通常の水準に戻す」とし、金融政策スタンスの主な調整手段は引き続きFF金利の誘導目標変更だとした。

同時に発表された2019年以降の実質GDP成長率、物価上昇率、失業率の予測中央値については、2019年と2020年のGDP成長率が0.1~0.2ポイント、2019~2021年の物価上昇率(PCE)が0.1ポイントそれぞれ引き下げられた一方で、2019~2021年の失業率が0.1~0.2ポイント引き上げられた(表参照)。バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのエコノミスト、ミシェル・メイヤー氏は、「FOMCはより高いインフレ率を望んでいるが、それが達成できるとは確信していない」と指摘した(「ウォールストリート・ジャーナル」紙3月20日)。

表 FOMCメンバーによる経済予測

(権田直)

(米国)

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