日EU・EPAビジネスセミナー、中小企業をテーマにバルセロナで開催

(スペイン)

マドリード発

2019年03月27日

欧州委員会は3月25日、バルセロナで、在バルセロナ日本総領事館、カタルーニャ州政府、スペイン貿易投資庁(ICEX)と、中小企業をテーマに日EU経済連携協定(EPA)セミナーを共催した。

スペイン産業・商務・観光省のホセ=ルイス・カイセル通商政策局長は、スペイン企業にとって、日本市場で関税が撤廃・減免されるチーズやワイン、豚肉、医薬品・化粧品、革靴の輸出、さらに鉄道分野での入札に特に商機があると解説した。カタルーニャ州企業省のマチルデ・ビリャロヤ産業局長は、同州における日本企業の集積(160社)や日本との貿易規模、また質の高い製造業や中小企業の重要性といった共通点を挙げ、これから日本における同州企業のプレゼンス拡大を推進すると述べた。

渡邉尚人・駐バルセロナ総領事は日・EU双方にもたらされる経済的影響やメリットを紹介。観光客だけでなく、日・スペイン間のワーキングホリデー査証の発給数も伸び、両国の人的交流は一層盛んになっているとして、企業も関係深化に乗り遅れてはいけないと促した。

EU側の副交渉官を務めた欧州委員会通商総局のマルコ・チルロ氏は「従来のEPAは時間とともに内容が遅れたものになるが、このEPAはイノベーション分野での協調をはじめ、将来に向けた修正・改善の余地を残した『生きたEPA』だ。大小を問わず企業の声を反映させていくべきだ」と強調した。

パネルディスカッションでは、スペインの中小企業の日本市場での課題が議論された。日西企業同友会(CEJE)のホルヘ・ラシェラス会長は課題として、「第1に根気不足、第2にアジア市場は全部同じだという先入観」を挙げた。要求の厳しい日本市場で成功するには、中期的な視野で顧客との関係づくりをする必要があるが、その投資を継続できるスペインの中小企業は少なく、政府の資金支援が必要だと強調した。

産業・商務・観光省バルセロナ商務事務所のアリシア・ヒラルデス貿易投資部長は、競争力がある製品・サービスを持つカタルーニャ企業は多いが、規制や流通構造、ブランド構築の軽視が日本でのビジネスの失敗につながる例も見られると指摘。一方で成功事例として、日本の輸入者と連携を深め、対日輸出を急増させた食肉企業、マーケティングに成功し日本人が顧客の相当部分を占める菓子ブランドの取り組みを紹介した。

中小企業団体を代表して登壇した講演者からは、食品や医薬品の輸出は好調な一方、工業品は自動車部品以外では厳しく、中小サプライヤーの海外進出を牽引できるスペインの大手の重電や機械・機器メーカーの存在感が希薄であることがボトルネックになっているとの分析もあった。

写真 パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

パネルディスカッションの様子(ジェトロ撮影)

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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