欧州理事会、英国のEU離脱延期を条件付きで承認

(EU、英国)

ブリュッセル発

2019年03月22日

欧州理事会(EU首脳会議)のドナルド・トゥスク常任議長は3月21日、最重要課題である英国のEU離脱(ブレグジット)の延期をめぐる欧州理事会の協議の結論を明らかにした。3月25日の週に英国議会が離脱協定案を承認すれば、EUは5月22日までの延期を認めるが、その週に承認が得られない場合は4月12日までの延期とすることで、EU加盟国首脳は合意した。EUとしてはどちらにしても、5月の欧州議会選挙(2018年5月28日記事参照)までにブレグジット問題に決着をつける構えだ。

欧州議会選挙日程に配慮した延期案に合意

EU首脳は3月21日、ブレグジットに関して英国のテレーザ・メイ首相から要請のあった、6月30日までの離脱延期、および離脱協定に関する法的拘束力を有する共同文書とEU・英国の将来関係の政治宣言を補足する共同声明に関するストラスブール合意の承認について議論を行った(2019年3月22日記事参照)。トゥスク常任議長は、このうちストラスブール合意について承認することを決定したことを明らかにした。

離脱延期に関しては、英国が提案するスケジュールを退け、英国議会での採決結果次第で、以下のシナリオが想定されるとした。

  1. 離脱協定案が3月25日の週に英国議会を通過した場合は、欧州理事会は5月22日までの延期を認める。
  2. 離脱協定案が3月25日の週に英国議会を通過しなかった場合、欧州理事会は、英国が進むべき方向性を固めるために必要な期間として、4月12日までの延期を認める。その間、実質的に全ての選択肢が残され、合意なき離脱(ノー・ディール)の選択肢も含まれる。

英国が希望する6月30日までの延期が退けられた背景として、今回の欧州理事会では、欧州議会のアントニオ・タヤーニ議長が冒頭、英国提案に難色を示し、欧州議会選挙に影響の出ないよう、最短の延期期間設定を主張したことがある。4月12日は、英国が欧州議会選挙に参加するか否かを決定する最終日と考えられている。トゥスク常任議長は、4月12日までに決定がなされない限り、離脱の長期間の延長は自動的に不可能になる、と述べた。

EUは、流動的な現在の情勢を考慮し、ノー・ディールも想定し、緊急対策の準備を続けるとしている。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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