バンサモロ暫定政府が発足、和平の大きな一歩に

(フィリピン)

アジア大洋州課

2019年03月05日

フィリピンで2月22日、バンサモロ暫定統治機構(BTA)が発足し、首相代行にイスラム武装組織モロ・イスラム解放戦線(MILF)のムラド議長が就任した。BTAは2月26日に、バンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域(BARMM、注1)を治めることが正式に認められた。暫定とはいえ、自治政府の誕生は、長年にわたり紛争の絶えなかった同地域の和平の実現の大きな一歩となる。

フィリピンでは、イスラム教徒による自治政府樹立を認める「バンサモロ基本法」が2018年7月に成立(2018年7月30日記事参照)。その是非を問う住民投票が2019年1月21日と2月6日に行われ、ミンダナオ島西部の5州1市、コタバト州の63のバランガイ(最小行政単位)がBARMMの領域となることが確定した。正式なバンサモロ政府は、2022年の選挙を経て樹立される見込みだ。

BTAの発足やBARMMの領域確定はミンダナオ島の和平の実現に大きく寄与するが、完全な和平の実現には大きな課題が残されている。フィリピンのイスラム勢力には、今回BTAの議長を出したMILFのほかに、モロ民族解放戦線(MNLF)がある。もともとMILFは、MNLFから離反した組織で、今回の自治政府誕生は、あくまでMILFと政府の和平合意によるものだ。これまでMNLFは、BTA発足、BARMMの領域確定(注2)、また、そこに至る一連の和平プロセスから距離を置いており、今後、政府はMNLFの協力を取り付けることが重要となる。

(注1)バンサモロ基本法の批准を受けて、従来のムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)から、自治領域を拡大するかたちで移行したもの。

(注2)BARMMの領域は、住民投票の結果、ムスリム・ミンダナオ自治地域(ARMM)から置き換わることが決まったが、もともとARMMは、かつて政府がMNLFとの和平合意により1996年に設置された自治地域だ。

(渡邉敬士)

(フィリピン)

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