EU、英国に離脱延期に伴う具体的な計画の提示を要請

(EU、英国)

ブリュッセル発

2019年03月20日

欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官は3月19日、ブリュッセルで開催された「EU基本条約第50条(加盟国離脱)に関する一般問題理事会」の協議を踏まえて、英国側の求める離脱延期についてEU首脳が是非を判断する場合、具体的な計画の提示が必要との認識を明らかにした。EU側は3月21~22日に開かれる欧州理事会(EU首脳会議)で、離脱延期について協議する見通しだ。

状況によって、離脱延期拒否の可能性を示唆

バルニエ首席交渉官は今回の声明で、欧州理事会前にメイ首相から離脱の要請があった場合には、英国以外の27カ国が延期の理由およびその有効性について評価すると表明。「離脱の延期により、英国議会での離脱協定案の承認の可能性は高まるのか」「政治宣言案の手直しに若干の時間が必要であるために延期を要請するのか」の2点が現時点で想定される主たる疑問だと指摘した。延期の目的と結果(として得られるもの)についての英国側の具体的な説明なしにはEU首脳は適切な判断ができない、というのが同首席交渉官の基本的な立場だ。

バルニエ首席交渉官は「合意のない離脱(ノー・ディール)回避を採決したところで、(「離脱協定」案を承認しない限り)止めることはできない」「(EU側は)皆、ノー・ディールを前提に準備を完成すべき」と強気の姿勢を打ち出している。

また、同首席交渉官は「英国議会(下院)の過半数が望むなら、今後の数日で、政治宣言案をより野心的な内容に修正できる」とも指摘するが、英国側の妥協が引き出せないとすれば、「何のための離脱延期なのか」と英国側の出方をうかがう姿勢をみせた。

他方、欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長は英国のEU離脱(ブレグジット)の大幅な延期も念頭に、EU加盟国首脳の説得(2019年3月15日記事参照)を進めており、オランダのマルク・ルッテ首相(3月15日)、ドイツのアンゲラ・メルケル首相およびフランスのエマニュエル・マクロン大統領(3月18日)、アイルランドのレオ・バラッカー首相(3月19日)らと精力的に会談し、事態打開に向けて動いている。ただ、そのトゥスク常任議長もアイルランドのバラッカー首相との会談では、ノー・ディールに向けた準備状況について協議したとしている。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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