キューバ新憲法が施行、私有財産の承認が重要な変更点と有識者

(キューバ)

メキシコ発

2019年04月15日

キューバの特別議会が4月10日に招集され、ラウル・カストロ・キューバ共産党第1書記が新憲法の公布を宣言した。同日に官報公示され施行した。

キューバの憲法改正については、2018年6月からプロセスが開始され、語彙(ごい)の修正を含めて760カ所の修正がなされた後、2月24日に改正の是非を問う国民投票を実施し、賛成多数で承認された(2019年3月1日記事参照)。議会取材は国内メディアだけが許可され、承認の様子は人民権力全国議会のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公開された。

カストロ第1書記は新憲法の承認に際し、「新憲法はこれまでの憲法の娘のようなものであり、キューバの新しい世代の財産となるものだ」と祝福した。「ただし、公布しただけでは不十分であり、この憲法が効果的であるよう、またこの憲法のために不断の努力をしてきた議会にふさわしくある必要がある」とも述べ、新憲法施行後の振る舞いが大事だと説いた。続けて同氏は、米国がキューバに対してますます攻撃的になっており、都合が悪いことの責任を全てキューバに押し付けようとしていると指摘した。

キューバの学術機関であるキューバ経済研究所のリカルド・トーレス副所長はジェトロの取材に対し、新憲法で一番大きな変化は私有財産の承認だとする一方で、政治面では実質的には変化が少なく、地方議会の権限が拡大した程度にとどまると指摘した。

ヘルムズ・バートン法第3章の発動は5月1日まで凍結

米国には、キューバ自由民主連帯法(通称:ヘルムズ・バートン法)というキューバ経済制裁法が存在する。同法は1996年に米国で施行されているが、第3章に関しては、これまで発動が6カ月ごとに凍結されてきた。同章はキューバ革命政権に接収された資産を利用して商業行為を行う第三国の企業に対して、当該資産の米国人所有者(主にキューバ系米国人)が米国の裁判所に損害賠償訴訟を起こすことができることを認めている。国内法を第三国に適用する点が国際社会から問題視されている。

米国務省は1月16日、第3章の凍結期間を3月18日までと発表し、3月19日から一部が発動した。これにより、国務省が発表するキューバ制限リスト(CRL)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに掲載されたキューバ国営企業に対する提訴は既に可能になっている。ただし、第三国企業を相手取った訴訟を認める部分については、現在のところ5月1日まで発動が凍結されている。

(岩田理)

(キューバ)

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