米国がヘルムズ・バートン法第3章の5月2日発動を発表

(キューバ、米国、EU、カナダ)

メキシコ発

2019年04月18日

米国のマイク・ポンペオ国務長官は4月17日、キューバ自由民主連帯法第3章を5月2日から発動すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同法は1996年に発効したが、提案者のヘルムズ上院議員(共和党)とバートン下院議員(共和党)にちなんで「ヘルムズ・バートン法」と呼ばれている。

同法第3章は、キューバ革命政権に接収された資産を利用して直接または間接的(第三者経由)に利潤を得る商業行為を、故意かつ意図的に行う第三国の企業に対して、当該資産の米国人所有者(主にキューバ系米国人)が米国の裁判所に損害賠償訴訟を起こすことができることを認めるもの。米国司法省が発表している同法のサマリーによると、第3章については1996年8月1日に発効しているものの、歴代の米国大統領が6カ月ごとに適用除外(waiver)としてきた。しかし2019年に入ると、運用除外期間が45日、30日と徐々に短くなり、その間に、トランプ大統領によるキューバ制裁強化に関する覚書に基づき(2017年6月28日記事参照)、キューバ制限リスト(CRD)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに記載されるキューバ軍関係の国営企業に対する損害賠償訴訟が可能になるなど、圧力を強めていた。

EUやカナダは反対を表明

キューバのミゲル・ディアス・カネル国家評議会議長はツイッター(4月17日)で、「力を用いても誘惑されても、誰も私たちキューバ国民から何かを奪い取ることはできない。私たちは屈服しない」と、米国への対抗姿勢を鮮明にした。

米国の発表に対し、キューバに投資をしている諸外国からは反対の表明が相次いでいる。カナダのクリスティア・フリーランド外相は「米国の決定に深く失望している。米国の決定に対し、どのような回答が有効かを検証する」とし、「キューバで商業活動をしているカナダ企業とは既に連絡をとり、カナダ政府が保護することを伝えた」と語った(キューバ国営メディア「キューバディベート」4月17日)。また、EUのフェデリカ・モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表(欧州委員会副委員長兼務)と欧州委のセシリア・マルムストロム委員(通商担当)は4月17日に共同声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、「今回の米国の対キューバ制裁は国際法にのっとらない第三国への一方的な措置で、断固反対する」と述べた。歴史的にキューバに多くの投資を行っているスペインも、同様に政府が企業を保護すると発表している。

(岩田理)

(キューバ、米国、EU、カナダ)

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