国内鉄鋼2位が経営破綻、2万5,000人の雇用に影響

(英国)

ロンドン発

2019年05月23日

英国の鉄鋼第2位のブリティッシュ・スチールが経営破綻し、強制清算に入ったと、国内メディアが5月22日に一斉に報じた。グレック・クラーク・ビジネス・エネルギー・産業戦略相の英国下院でのスピーチとそれに対する質問によると、同社の破綻は、従業員とサプライチェーンを含め、2万5,000人以上の雇用に影響するとされている。

ブリティッシュ・スチールは、イングランド西部のスカンソープと北西部のティーズサイドなどに工場を構え、5,000人以上を雇用している。サプライチェーンでは2万人以上が同社とのビジネスに関与している。同社の経営は、2018年6月からの米国による鉄鋼への25%の追加関税(2018年6月1日記事参照)や、EU離脱(ブレグジット)の国民投票後のポンド安、中国からの安価な製品の流入により厳しい状況が続いていた。

加えて、欧州委員会は、排出権取引市場の混乱を避けるべく、英国がEU離脱協定を批准するまで、欧州排出権取引制度(EU-ETS)における英国の取引参加を停止。これにより、通常は国際的な競争にさらされている産業を対象に供与される無償排出割り当ても停止していた。同社はこの権利を購入するため政府から1億2,000万ポンド(約166億8,000万円、1ポンド=約139円)の融資を先日受けていた。厳しい経営状態からさらなる融資を政府に求めていたが、追加融資は受けられず、破綻手続きを開始した。

政府は、同社の広範な財政課題の解決策について議論を重ねたものの、法律の範囲内での支援しかできず、本件のような財政支援は商業ベースでなされなければならないため、支援できないとした。英国商工会議所(BCC)は、サプライチェーンへの潜在的なインパクトに懸念を示し、同社が地域コミュニティーに根付いていることから、新しい買い手が見つからなければ、鉄鋼産業に強く依存している多くの地域が荒廃すると警鐘を鳴らした。

近年、事業環境の変化などにより、百貨店のデベナムズやハウス・オブ・フレイザーなど大手小売りを中心に経営破綻が報じられている。なお、2019年第1四半期(1~3月)の英国の実質GDP成長率(前年同期比)は、ブレグジットに向けた在庫積み増しなどの特殊要因もあり、1.8%を記録している。

(鵜澤聡)

(英国)

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