英国で欧州議会選、メイ首相への辞任圧力は最高潮に

(英国、EU)

ロンドン発

2019年05月23日

英国で5月23日、欧州議会選挙の投票が行われる。英国のEU離脱(ブレグジット)が実現していれば実施されないはずだったが、2度にわたる離脱延期で現在もEUにとどまっているため、選挙への参加が確定した(2019年5月10日記事参照)。英国の議席数は73で、12の選挙区ごとに比例代表制で行われる(注)。

ブレグジットが最大の政治的争点となっている英国では、欧州議会選はEU離脱を決めた2016年6月の国民投票のやり直しの是非を問う色彩も帯びており、特に2大政党の保守、労働両党以外の少数政党の多くは、ブレグジットを前面に出して投票を訴えている。

EU離脱を声高に主張するブレグジット党の勢いは衰えを見せない。英国調査会社ユーガブが英紙「ザ・タイムズ」の依頼で5月19~21日に行った最新の世論調査では、同党への支持は37%と前週の35%からさらに上昇。5月2日の統一地方選挙(2019年5月7日記事参照)で議席をほぼ倍増させた自由民主党(EU残留支持)が19%、労働党(多数は穏健な離脱を支持)が13%、緑の党(EU残留支持)が12%と続いた。政権与党の保守党はわずか7%と、前週の10%からさらに下落。大敗はほぼ確実だ。

テレーザ・メイ首相が5月21日、欧州議会選に先立って離脱協定関連法案に関する新提案を発表(2019年5月22日記事参照)したのは、政権がブレグジットを実現する姿勢をあらためて示すことで、欧州議会選で保守党が受ける打撃を最小限に抑えたいというメイ首相や党執行部の思惑があったとの見方もある。しかし、新提案は党内外から激しい批判にさらされており、党勢回復には寄与していない。5月22日には、最重要閣僚の1人であるアンドレア・レッドソム院内総務が辞任を表明。首相にとって決定的な打撃となった。院内総務は辞任の理由について首相に宛てた書簡で、新提案に2度目の国民投票に関する議会採決を盛り込んだことや、新提案に際して閣議の審議・承認手続きを踏んでいないことなどを挙げている。

首相への党内からの辞任圧力は最高潮に達しており、保守党は混乱のまま欧州議会選を迎える。選挙結果が発表されるのは、全てのEU加盟国で投票が終了する5月26日午後10時(英国時間)以降になる見込み。

(注)イングランドの9選挙区とスコットランド、ウェールズの各選挙区では拘束名簿式、北アイルランド選挙区では単記移譲式の投票で選出される。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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