「北東アジアスーパーグリッド」構想実現のため、調整機関設立を提案

(モンゴル、中国)

北京発

2019年05月27日

モンゴルのバトトルガ大統領が4月24日から中国を公式訪問し、習近平国家主席と会談した。会談では、2019年10月で国交樹立70周年を迎える両国関係が、過去の努力の成果によって全面的戦略パートナーシップに進化していることを強調し、今後もこの関係を継続的に発展させ、互恵的協力関係を強化することで一致した。特に、貿易経済協力の枠組み内で、中国からの無償援助、低利借款案件を効率的、早期に実現するために双方が努力すること、中国がモンゴルからの高付加価値製品、特に農産品輸入の拡大に注力することで合意した。また、バトトルガ大統領が提案した「北東アジアスーパーグリッド」構想(2016年11月17日記事参照)に対して、中国側が賛同を表明した。そのほか、ロシア・中国間の天然ガスパイプライン、鉄道通過輸送協力に関する協定、一部の国境税関の営業時間の延長など、2国間の貿易経済、モンゴル・ロシア・中国の三者協力、文化教育、国際・地域問題などについて幅広く協議した。会談後には、両国政府間で12本、民間企業間で6本の計18本の合意文書を締結した。

また、バトトルガ大統領は4月26日から開かれた第2回「一帯一路」国際協力ハイレベルフォーラムに出席し、円卓会議で演説した。演説では、「今回の『一帯一路』フォーラムのスローガン『共に議論し、共に実現し、共に利益を得る』は現実的で時宜を得たものだ」と評価し、「インフラを『一帯一路』の枠内で整備することは、来る時代の要請で、各国の経済がさらに密接に連携していく流れは今後も加速する」との見方を示した。内陸国のモンゴルは周辺国との間で経済協力と相互理解を促進し、特に2018年のロシア・中国との首脳会談でロシアのプーチン大統領、中国の習国家主席と合意した「モ露中経済回廊」計画(2019年1月31日記事参照)の実現を加速することにより、モンゴルだけでなく、他の内陸国もモンゴル国内のインフラを経由して通過輸送することで、北東アジアの巨大市場にアクセスできると呼び掛けた。

そして、バトトルガ大統領は各国に対し、(1)国連の持続可能な開発目標(SDGs)において、アジア太平洋地域は目標8「働きがいも経済成長も」(注)の実施が不十分であるため、「一帯一路」の協力をこの分野に注力すること、(2)「北東アジアスーパーグリッド」構想の実現に向けた特定の課題を調整する機関をウランバートルに設立すること、の2点を提案した。

(注)全ての人のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を推進すること。

(藤井一範)

(モンゴル、中国)

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