サクラクレパス、日EU・EPAの自己申告制度の利便性を実感

(日本、EU、オランダ、フランス、ドイツ、スペイン)

欧州ロシアCIS課

2019年06月06日

文具メーカーのサクラクレパス(大阪市中央区森ノ宮)は1991年に買収・子会社化したオランダの画材メーカー、ロイヤル・ターレンスを通じて欧州向け輸出事業を拡大してきた。ジェトロは5月28日、同社で欧州向け輸出を担当する海外事業本部海外業務・企画課の東田菜月氏に、2月に発効した日EU経済連携協定(EPA)の活用状況について伺った。

東田氏によれば、サクラクレパスの海外向け輸出額は年々伸びているという。欧州向け輸出製品としては、マーカーやボールペン、特にファインライナーが主力となっている。ほかには、クレパスや絵具、水筆、シャープペンシルも出している。欧州向け製品はオランダのロイヤル・ターレンスに輸出し、同社経由でフランス、ドイツ、スペインなど欧州全域に販売している。

写真 ジェリーロールボールペン(サクラクレパス提供)

ジェリーロールボールペン(サクラクレパス提供)

3.7%の関税が即時撤廃に

日EU・EPAの活用については、欧州側から1月時点で発効後の適用依頼があり、準備してきたという。主力製品であるマーカーやボールペンのEU側輸入関税は3.7%で、協定発効後に即時撤廃であるため、目に見えて効果がある。輸入関税撤廃のメリットはロイヤル・ターレンスが享受するが、子会社であるため、グループ全体の利益となる。輸出者となるサクラクレパス本社側で工場に確認した上で、特恵関税適用のための原産性に関する申告書を作成している。一番多く利用している基準は、品目別原産地規則(PSR)のRVCによる付加価値基準だが、関税分類変更基準も利用しているという。どの原産性基準を使うかは、日EU・EPAのガイドラインに沿って工場側(必要な商品は本社で確認)で決めており、原産性に関する証明書類の保管も工場で行う。

工夫により原産性申告の作成も容易に

ただ、当初の準備に当たっては、2月に入っても申告する上で大事な適用条件を明確に把握できず、2月の出荷時には日EU・EPAの特恵関税が間に合わなかった。本社、工場職員の外部セミナー参加などを通じた学習、現地子会社を通じてオランダ税関への確認を踏まえて、3月下旬からようやく特恵関税を適用できるようになった。同社はその後、オランダ子会社から、2月まで遡及(そきゅう)適用ができる旨の連絡を受け、必要な書類を送付し、オランダ税関で確認中だという。

東田氏は日EU・EPAの自己申告制度について、「タイやマレーシアとのEPAで利用してきた第三者証明制度と比較して、原産地証明取得のための申請手続きや、同証明書を取りに行く手間や時間がなくなり、かつ発給費用も不要となることから、証明書類の保管が義務付けられても、船積業務の観点では、事務作業とコストの両面でメリットが大きい」と強調する。「(製品ごとの特恵関税利用の有無、原産性基準の種別を入れる欄を設けた)所定のシートにエクセルのインボイスを貼り付けて、マクロを走らせば書類ができ上がるように工夫したことから、申告書の作成も容易だ」と説明する。同社の事例は、自己申告制度のメリットと日EU・EPA活用は難しくないことを示す好事例と言えそうだ。

(田中晋)

(日本、EU、オランダ、フランス、ドイツ、スペイン)

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