5G試験実施に向けロシア移動通信大手と華為技術が合意、欧州系メーカーとの締結も相次ぐ

(ロシア、中国、スウェーデン、フィンランド)

欧州ロシアCIS課

2019年06月12日

ロシア民間移動通信大手MTSは6月5日、中国の華為技術(ファーウェイ)と2019~2020年にロシアでの第5世代移動通信システム(5G)の試験運用開始について合意したと発表した。合意枠内で両社は、現行のMTSのインフラにファーウェイ機器を用いた5Gおよびモノのインターネット(IoT)技術の導入、商用LTEの5G対応レベルまでの引き上げ、さまざまな利用条件を想定した5G試験を行う。

具体的な合意事項は、a.周波数帯スペクトル(情報信号)の効果的利用に関する協議実施、b.高速LTEギガバイト区域の開始、c.遅れの非常に小さいLTEの展開、d.5G固定ワイヤレスネットワークの開始、e.MTSの商用ネットワークにおける5Gの開始、f.5Gを用いたビジネス展開に関する協力、g.スペクトル分配を含むネットワークセグメント(グループ)の共同作成、h.産業やスマートシティー、住宅公共サービス、農業におけるIoTソリューションの導入、i.5G利用シナリオ(スマートシティー、スマートプロダクション、自動運送)の実現、j.高速鉄道、地下鉄、高層住宅など複雑なインフラ施設における5G試験実施など。今回の合意は、モスクワで同日に開催されたロ中首脳会談(2019年6月7日記事参照)の枠内で署名された。

ロ中首脳会談直後の6月6~8日開催にされたサンクトペテルブルク国際経済フォーラムでも、ロシアにおける5G試験実施に関連する合意が相次いだ。MTSは6月6日、スウェーデンの通信機器大手エリクソンと、タタルスタン共和国カザン市郊外の特区「イノポリス」で、スマートシティー分野の5Gソリューション開発について合意した。

ロステレコムと子会社の携帯通信大手「テレ2」は同日、エリクソンと27ギガヘルツ(GHz)周波数帯での、エリクソン機器を用いたモスクワでの5G試験運用実施に関する合意を締結。加えて、フィンランドの通信機器大手ノキアとも、モスクワやロシアの諸都市で26.5~29.5GHz周波数帯および3.3~3.8GHz周波数帯での試験区域の創設に関して覚書を締結した。

モスクワでは、5G試験運用に向け市街地5カ所が試験区域に指定されているが(2019年4月18日記事参照)、国家無線周波数委員会(GKRCH、注)はさらに、2018年のサッカー・ワールドカップ・ロシア大会の決勝が行われたスタジアムのある「ルジュニキ」地区と、高層ビル街「モスクワ・シティー」も対象にすると報じられている(「ベドモスチ」紙6月5日)。

(注)周波数領域の規制および周波数割当・利用に関する国家政策決定を担う、デジタル発展・通信・マスコミ省が管轄する省庁間調整機関。

(齋藤寛)

(ロシア、中国、スウェーデン、フィンランド)

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