欧州委、英国のEU離脱日延期を踏まえた準備指針を公表

(EU、英国)

欧州ロシアCIS課

2019年06月21日

欧州委員会は6月12日、5回目となるブレグジット準備のコミュニケーション(指針)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これは、英国政府からの要請に応じて、EU離脱日を最長で10月末まで延長する4月10日の特別欧州理事会での決定(2019年4月11日記事参照)を踏まえて、英国のEU離脱(ブレグジット)への対応準備やコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を確認するもの(2019年3月22日記事2019年3月26日記事参照)。

欧州委は2017年12月以降、英国との合意なき離脱(ノー・ディール)シナリオの準備を進めてきており、これまで、19の法案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを提示し、そのうち18法案を欧州議会とEU理事会で採択した。また、残りの2019年のEU予算に関する緊急時対応規則も6月中に採択される見込みだ。欧州委はまた、63の非立法的行為(委任規則や実施規則)を採択し、93の準備通知外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表していることを示した。

離脱日延期でも新たな措置は不要と判断

さらに、欧州委は英国のEU離脱日の延期に伴い、全ての措置が意図する目的に合致し続けているかの審査を実施した。その結果、欧州委は、実質上のいかなる措置も修正の必要がなく、目的に合致したままだと結論付けた。欧州委はこのため、離脱日の延期に伴い、新たな措置を計画していないとしている。

他方、欧州委は全ての利害関係者に、あらゆるシナリオに備える責務があることを喚起している。特に、ノー・ディールになる場合、英国は離脱協定がないまま、EUからみて第三国となる。英国がEUを離脱した瞬間から、EUの全ての一次法と二次法の英国への適用が停止される。離脱協定で規定されている「移行期間」もないことになる。市民や企業にとって、明らかに大きな混乱と、深刻な経済的な悪影響が予想され、それは比較的に、EU27カ国より英国で大きくなると説明している。

欧州委はまた、今回の指針で、今後数カ月にわたり、継続的な警戒が必要な分野として、市民の居住・社会保障資格、医薬品・医療機器・化学物質、関税・間接税・国境検問所設置、輸送、漁業活動、金融サービスの6分野での準備・対応状況を強調している。

なお、欧州委のユンケル委員長は4月3日の欧州議会で、ノー・ディールでの離脱になる場合に、EUと英国の将来関係の協議を始める前提条件として、(1)ブレグジット前に得ていた市民の権利維持、(2)EU加盟国としての英国の財政義務の履行、(3)ベルファスト合意(1998年の英国とアイルランドとの和平合意)の書簡と精神、アイルランド島の平和、域内市場の保全維持、の3点を英国に対して求める原則を示している。

(田中晋)

(EU、英国)

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