米国、メキシコの鉄鋼製品への相殺関税を仮決定

(メキシコ、米国、カナダ、中国)

メキシコ発

2019年07月12日

米国商務省は7月8日、メキシコ、中国、カナダからの鉄鋼の輸入に関する声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。声明によると、メキシコと中国は国が企業に補助金などを供与しており、それによって輸出競争力が高まった鉄鋼製品の輸入が米国企業に実質的な損害をもたらしているとした。同省国際貿易局(ITA)のファクトシートPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)で名指しされているメキシコの一部の鉄鋼メーカーについては最大70.01%、その他の企業からの鋼材輸入については13.62%の相殺関税を課す仮処分を決定したとした(ただし、1社のみ0.01%と低率)(注)。

今後の流れとしては、11月19日に商務省が相殺関税(CVD)の最終決定を出し、クロ判定だった場合には米国国際貿易委員会(ITC)が2020年1月2日までに国際産業に与える被害の有無を決定し、同様にクロ判定となると相殺関税が賦課される。

メキシコ政府と産業界は冷静な判断を求める

米国の声明に対し、全国鉄鋼会議所(CANACERO)は7月9日に声明を発表し、「米国が訴えている補助金は鉄鋼業界に限定されたものではなく、メキシコの工業発展のためのものであり、米国をはじめとする多くの国が採用しているプログラムだ。従って、WTO違反には当たらず、相殺関税は不当だ」と主張している。また、本件は5月19日に撤廃された米国の1962年通商拡大法232条による鉄鋼・アルミへの関税賦課(2019年5月21日記事参照)とは無関係だとの認識を示した。

メキシコのグラシエラ・マルケス経済相は、相殺関税やアンチダンピング(AD)税の賦課に関するプロセスや調査は一般的に行われているもので、メキシコも342に上る調査を行っていると言及し、今回の決定もまだ仮決定である点を強調して事態の沈静化を図った。また、メキシコ経済省は不公正な補助金がないかを確認するため、米国当局への適切な情報提供を行っていくと発表、対話によって解決する姿勢を打ち出している。

相殺関税の対象となっている企業の中でも、影響は限定的と考える企業もある。メキシコ最大の財閥カルソ・グループは「グループ企業が対象になっているものの、われわれは米国に鋼材を輸出していないため、米国の決定に影響はない」とした(「エル・ウニベルサル」紙7月11日)。

(注)ITAは2月4日~3月29日にかけて、メキシコ、カナダ、中国からの鉄鋼輸入に対してのCVDとAD調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行った。

(岩田理)

(メキシコ、米国、カナダ、中国)

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