チェコ自動車工業会が2018年の会員企業の実績を発表

(チェコ)

プラハ発

2019年07月09日

チェコ自動車工業会(Auto SAP)は6月27日、2018年のチェコ自動車産業の実績を発表した。これによると、同工業会会員企業(全146社)の売上高は1兆1,024億コルナ(約5兆2,915億円、1コルナ=約4.8円)で、過去最高記録を更新したものの、前年比で0.8%増の微増にとどまった。データの詳細は表参照。

表 チェコ自動車工業会会員企業の実績

なお、会員企業の内訳は、完成車メーカー13社、部品メーカー93社、その他(サービス、開発・研究など)40社・団体となっている。

全工業製品売上高に占める会員企業の売上高の割合は23.7%で、チェコの全輸出額に占める割合は20.9%だった。また、会員企業の労働条件をみると、平均賃金(4万865コルナ)は、チェコ全体の平均賃金を28.2%上回った。うち、ブルーカラー労働者の平均賃金は前年比9.4%増の3万4,556コルナに達し、これもチェコ全体の平均賃金を8.4%上回っている。

EUでは、2030年までに乗用車のCO2排出量を37.5%削減(2021年比)すること合意され(2018年10月12日記事参照)、今後ますます、電気自動車(EV)への転換を迫られる。こうした中、同工業会のボフダン・ワイナル会長は、生産、売り上げ、輸出の全てにおいて、チェコの自動車業界は2018年にピークに達したとみている。同氏は「会員や政府機関のデータによると、成長速度が低下しており、人材不足も深刻化している。自動車業界が転換期にあること、また欧州・世界市場の状況、その他のリスクを鑑みれば、今年の実績は昨年と同程度であることが予想される」と述べている。また、転換期を乗り越えるためには「顧客の関心を得ることがカギとなる。このためには政府が積極的に関与し、ユーザーフレンドリーな環境を確立することが最も重要だ」と指摘した。具体的に自動車工業会は、充電スタンド建設の加速やEVに対する税制優遇政策の導入、EV所有者を対象にした駐車料金の割引、社用車を私用目的で利用する場合に課せられる税の軽減などを提案している。

チェコでは現在、環境省が地方自治体など公的機関を対象に、公用車として新車のエコカーを購入する場合、助成金を交付する制度を実施している。さらに、産業貿易省は中小企業向けにEV購入および会社敷地内設置の充電スタンド購入に対する補助金制度を、運輸省は充電スタンド建設に関する助成金制度を実施している。

しかしEV購入に関して、一般の消費者を対象とした優遇政策などはいまだに導入されておらず、2018年の国内EV登録台数は618台、2019年1~5月は246台にとどまっている。

(中川圭子)

(チェコ)

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