大蔵公債相が辞任、後任は同省のエレーラ次官

(メキシコ)

メキシコ発

2019年07月11日

メキシコのカルロス・マヌエル・ウルスア・マシアス大蔵公債相は7月9日、自身のツイッターで同日付での辞任を発表した。同氏は大統領に宛てた書簡の中で、辞任の理由について「経済政策で多数、意見の相違があった。現政権は根拠が不十分なまま幾つかの決定を行った。経済政策は影響や複数の根拠を基に実行されるべきで、右派や左派であろうが、極端な政策な避けるべきだ」とし、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領の政権運営を批判した。また、「大蔵公債省の仕事に知識が乏しい人材を同省に従事させることは受け入れられない。現政権の影響下にある人間の指示によるもので、明らかな利益相反行為だ」とした。

ウルスア氏は元メキシコ市財務長官で、米国ウィスコンシン大学の経済学博士。メキシコシティ新空港建設の中止や石油鉱区入札の無期限延期など議論を呼ぶ政策が多い現政権の中では、現実主義者として知られ、「メキシコ政府の中で最も優秀な人物の1人」(「エル・エコノミスタ」紙7月9日)と評される同氏の辞任は、現政権にとっては大きな痛手だ。

AMLO大統領は「たとえ政権内部でぐらつき、無理解や疑念があったとしても落ち着いて決定をしていかなければならない。だからこそ辞任を受理した」とし、同氏からの反発を認めた。

また、AMLO大統領はウルスア氏の後任には、大蔵公債省次官のアルトゥーロ・エレーラ氏を据えた。同氏は、エル・コレヒオ・デ・メヒコの経済学修士とニューヨーク大学の経済学博士号を持つ。職務経験としては、AMLO氏がメキシコ市長だった2000~2004年にメキシコ市財務局で要職を歴任、2004~2006年にはウルスア氏の後任でメキシコ市財務長官を務めた。

ただし、エレーラ氏がAMLO大統領と一枚岩になれるかは不透明なようだ。7月9日付の「レフォルマ」紙によると、大統領は、自動車所有税を連邦税として復活させる案と、ドス・ボカス港製油所建設(2019年5月10日記事参照)の完成を遅らせる案を、拒否したとのことだ。

米国格付け大手のムーディーズは今回の辞任に対し、「政権内部が問題を抱えている証明」として危惧する一方、後任のエレーラ氏については「短期的には不安を軽減させ、市場への影響を限定的にする人事」として、一定の評価をしている(「エル・フィナンシエロ」紙7月9日)。

(岩田理)

(メキシコ)

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