国民議会が農薬グリホサートの全面禁止を決議、EU圏で初もEU法に抵触の可能性

(オーストリア)

ウィーン発

2019年07月09日

オーストリア国民議会は7月2日、除草剤のグリホサートの全面使用禁止を賛成多数で決議した。社会民主党(以下、社民党)のパメラ・レンディ=ワーグナー党首は、グリホサートには発がん性の疑いがあるとする科学的証拠が積み重なっており、全面禁止の法案を提出したと理由を述べた。全面禁止を決議したのはEU加盟国で初めて。

グリホサートについては、議会の農業委員会で2018年、社民党が即時使用禁止案を提出したが、フィジビリティー調査結果が出るまで採決を延期した背景がある。2019年5月まで政権を担当していた国民党は、農業への影響を小さくするため、公園や墓地、学校やスポーツ施設、病院周辺などの公共性の高い場所での使用を禁止するという、限定的な使用禁止案を上程したが、支持を得られなかった。

国民党は現在、グリホサートを使用している農家への影響を懸念している。リベラルのNeos党は、この決議はEU法に抵触すると認識しているものの、今回、社民党案に賛成票を投じた。

ただし、全面禁止はEUの植物保護製品規制に抵触する可能性がある。EU規制では、2022年末までの使用が認められており、加盟国やその地方では、厳然とした理由がある場合においてのみ、例外的に使用の禁止することが認められる。このため、かつてケルンテン州による全面禁止措置は認められなかった。

今回決議は2020年1月1日から発効の予定。ただし、欧州委員会が3カ月以内に異議を唱えた場合、発効しない可能性がある。

グリホサートの製造元でもあるドイツ化学品大手のバイエルは、同決議を受けたドイツメディアの取材に対し、「オーストリア国民議会の決議は大規模な研究結果と相反し、EU法に抵触している。欧州委員会は同決議を批判的に検証し、必要な法的手段を講じるべき」と応じた。

(田中由美子)

(オーストリア)

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