税制

最終更新日:2024年02月04日

法人税

法人税率は、「現地法人」か「支店」かによって異なる。ケニア現地法人として登記する場合は30%、一方で外国法人の支店として登記する場合は37.5%である。ただし、支店は利益の本国(日本など)への送金に源泉徴収税(WHT)を課税されないが、現地法人はWHTとして15%が課税される。ケニアの会計年度は7月1日~翌年6月30日。

法人税は次のとおり。

  1. ケニア法人(外国法人の子会社を含む):30%。
  2. それ以外の企業(外国法人の支店を含む):37.5%
    ただし、支店等の恒久的施設を通じてケニアで事業を営む税法上の非居住者企業については税率を居住者企業と同じ30%とする。
  3. ナイロビ証券取引所(Nairobi Securities Exchange)への新規上場企業の法人税率は、発行資本比率が40%の場合は5年間にわたり20%、30%の場合は5年間にわたり25%、20%の場合は3年間にわたり27%に減税。
  4. 経済特別区(SEZ)および輸出加工区(EPZ)において、事業を行う企業には、優遇税率が適用される。(ケニア「外資に関する奨励」を参照)
  5. 地方都市(ナイロビやモンバサ以外)への工業化を促す措置として、当該累積投資額が2億ケニアシリング(Ksh)を上回る場合は、投資額の150%の控除を受けられる。

なお、所得税法に基づき、会計年度終了後6カ月目までに、自己申告書を提出することが義務付けられている。1年間の所得のうち、4カ月目、6カ月目、9カ月目、12カ月目の各20日までに、分割払いの法人税を納める必要がある。法人税の差額は、会計年度終了後4カ月目までに支払わなければならない。また、税法上の必要な書類・記録は、5年間保存することが義務付けられている。

ケニア歳入庁(Kenya Revenue Authority:KRA外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

ケニア法規サイト:所得税法(Act of Income Tax外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)

二国間租税条約

日本とケニアは二重課税防止協定(DTA)を締結していない。ケニアは15カ国との間で二重課税防止協定を締結しており、これらの国の居住者・法人への支払いは、源泉徴収税(WHT)の税率が低い場合がある。

ケニアは次の国と二重課税防止協定(DTA)を締結・発効している。
カナダ、デンマーク、フランス、ドイツ、インド、ノルウェー、南アフリカ共和国、スウェーデン、英国、韓国、イラン、アラブ首長国連邦(UAE)、カタール、ザンビア、セーシェル。
これらの15カ国の居住者・法人への支払いに際しては、源泉徴収税(WHT)の軽減税率が適用される。

源泉徴収税(WHT)の軽減税率
配当金 人的役務(管理・専門家報酬) ロイヤルティー 利子
英国 15% 12.5% 15% 15%
ドイツ・カナダ 15% 15% 15% 15%
スウェーデン 15% 20% 20% 15%
ノルウェー 15% 20% 20% 20%
デンマーク 20% 20% 20% 20%
ザンビア 0% 20% 0% 0%
インド 10% 10% 10% 10%
フランス 10% 5% 10% 12%
南アフリカ共和国 10% 5% 10% 10%
韓国 10% 5% 10% 12%
カタール 5% 5% 10% 10%
UAE 5% 5% 10% 10%
イラン 5% 5% 10% 10%
セーシェル 5% 10% 10% 10%

※二重課税防止協定(DTA)を締結しているが、発効していない国は次のとおり。
中国、イタリア、クウェート、モーリシャス、東アフリカ共同体加盟国、オランダ。

その他税制

個人所得税、付加価値税(VAT)、物品税、源泉徴収税、基準税、労働者訓練税、観光税、保険税、移転価格、デジタルサービス税、キャピタルゲイン税などがある。

ジェトロ:調査レポート  ケニア税務Q&Aマニュアル(2022年2月)

  1. 個人所得税

    居住者、非居住者に関わらず、ケニアで発生したすべての所得に対して課税される。居住者の場合は、全世界所得(つまり日本での収入を含む)が課税対象となる。なお、「居住者」の定義は、当該年に183日以上(1年間の半分以上)ケニアに滞在していた者、または、当該年とその前年の2年間で平均122日以上ケニアに滞在していた者を指す。
    毎年6月30日までに当該年の所得についてiTax外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで申告することが義務付けられている。
    個人所得税の税率は、所得に応じて次のとおり。

    年収 税率
    28万8,000Ksh以下 10%
    28万8,001Ksh~
    38万8,000Ksh
    25%
    38万8,001Ksh~
    600万Ksh
    30%
    600万1Ksh~
    960万Ksh
    32.5%
    960万1Ksh以上 35%

    ケニア歳入庁:所得税について(About Income Tax外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

  2. 付加価値税(VAT)

    原則16%。ただし、ケニア政府が指定する一部品目は免除となる。付加価値税(VAT)の登録義務が生じるのは年間売上が500万Kshの人・企業。

    付加価値税(VAT)が免除される対象品目・サービスの一覧表は、次のPDFを参照。
    ジェトロ:付加価値税が免除される対象品目・サービス一覧表PDFファイル(840KB)
    付加価値税(VAT)の税率が0%となる対象品目の一覧表は、次のPDFを参照。
    ジェトロ:付加価値税の税率が0%となる対象品目・サービス一覧表PDFファイル(427KB)

    ケニア法規サイト:付加価値税法(Value Added Tax Act外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(317KB)

  3. 物品税(Excise Duty

    物品税法の第1表で指定された特定の品目とサービスのみが、物品税の課税対象となる。

    物品税の対象品目および税率の一覧表は、次のPDFを参照。
    ジェトロ:物品税の対象品目一覧表PDFファイル(529KB)

    ケニア歳入庁:物品税法(The Excise Duty Act 2015外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(1,156KB)

  4. 源泉徴収税(Withholding Tax: WHT)

    居住者・非居住者の区分により税率が異なる。なお、受取人が支払い企業の資本12.5%以上を有する居住者である場合は、源泉徴収税は課税されない。

    居住者・非居住者の税率
    内容 居住者の税率 非居住者の税率
    配当金 5% 15%
    人的役務(管理・専門家報酬) 5% 20%
    ロイヤルティー 5% 20%
    利子 15% 15%

    ケニア歳入庁:源泉徴収税(Direct Taxes‐Withholding Tax外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

  5. 基準税(Standards Levy
    製造業には基準税があり、毎月、工場出荷額に対し0.2%(下限は毎月1,000Ksh、上限は年間40万Ksh)が課せられる。

    ケニア法規サイト: 基準税令(Standards Levy Order外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

  6. 労働者訓練税(Training Levy
    雇用者は、労働者1人当たり毎月50kshの労働者訓練税を支払う必要がある。

    対象は、ホテル・レストラン業以外のすべての業種。ホテル・レストラン業については、別途、観光税(Tourism Levy)が課せられる。

    ケニア法規サイト:労働者訓練税(INDUSTRIAL TRAINING(TRAINING LEVY)ORDER, 2007外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(52.2KB))〔No.113を参照〕

  7. 観光税(Tourism Levy

    ホテル・レストラン業に対して、売上額の2%が徴収される。
    ケニア法規サイト:観光税令(Tourism Levy Order外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(18.6MB)

  8. 保険税(Insurance Premium Levy

    総保険料の1%が保険加入者に課税され、保険会社が徴収する。なお、ケニア国外の再保険者に支払われた再保険料については、税率が5%となっている。

    ケニア法規サイト:保険規則(Insurance Regulation外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

  9. 移転価格(Transfer Pricing

    ケニアの移転価格はOECDの移転価格ガイドラインに沿って作成されており、移転価格の算定に関する各種方法を規定している。

    移転価格算定方法

    • 独立価格比準法(Comparable Uncontrolled Price Method
    • 再販売価格基準法(Resale Price Method
    • 原価基準法(Cost Plus Method
    • 利益分割法(Profit Split Method
    • 取引単位営業利益法(Transactional Net Margin Method
    • 国税局長が定めるその他の方法
  10. デジタルサービス税(Digital Service Tax
    電子市場のプラットフォーム提供者およびそのプラットフォームへ電子サービスを供給する者に課される税で、ケニアに恒久的施設(Permanent Establishment)を持たない非居住者のみに適用される。デジタルサービスの対価として受領した額、またはユーザーがプラットフォーム利用に伴い支払った手数料に課される。税率は3%。
  11. キャピタルゲイン税(Capital Gain Tax

    個人または法人が財産を売却・譲渡した際の利益に対して課される税金で、税率は15%。

    ケニア法規サイト:金融法(Finance Act 2022PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(1758KB)

  12. 印紙税(Stamp Duty

    不動産、リース、有価証券などの譲渡の際に課税される。料率は印紙税法の別表に規定されており、例えば、不動産譲渡の料率は都市圏の場合は4%、地方の場合は2%。

    ケニア法規サイト:印紙税法(Stamp Duty Act外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

  13. 異議申し立て
    課税処分に対して納税者は歳入庁(KRA)に異議申し立てができる。異議申し立てに対しては、60日以内に修正または却下などの決定がなされる。異議申し立てを受理した日から60日以内に決定がなされなかった場合は、当該異議申し立てが認められたものとみなされる。
    合意に至らない場合は、国税不服申し立て審判所(Tax Appeal Tribunal)へ訴えることが可能。審判に不服の場合は、上訴裁判所(Court of Appeal)に控訴できる。
  14. その他

    2015年1月から、税申告はすべてケニア歳入庁のポータルサイト"iTaX"で行うことになった。
    ケニア歳入庁:iTax Online eServices外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます